相続税の税務調査とは?対象や基準を徹底解説!

相続税の申告を終えた方やこれから申告を控えている方にとって、税務調査のリスクは気になる問題ではないでしょうか。相続税の税務調査は、すべての申告者に行われるわけではありませんが、高額な財産や複雑な申告内容の場合、税務署が調査を行う可能性が高くなります。また、申告内容に誤りや漏れがあった場合には、追徴課税やペナルティが課されることもあるため、事前の備えが非常に重要です。

この記事では、相続税の税務調査がどのような基準で行われるのか、調査を回避するためのポイントや、実際に税務署から調査の通知が来た場合の対処法について詳しく解説します。また、専門家の活用方法やよくある質問にもお答えしますので、税務調査への不安を解消したい方はぜひ最後までご覧ください。

相続税の税務調査とは

相続税の税務調査の基本概要

相続税の税務調査とは、相続税の申告内容が正確であるかを税務署が確認する手続きのことです。税務署は相続財産の申告漏れや不適切な評価がないかを厳密に調査します。特に高額な財産や現金の動きが頻繁な場合、税務署は不正申告や意図的な申告漏れを防ぐために、申告内容を詳細に調べます。これにより、正しい納税額が確保され、納税者間の公平性が保たれます。

税務調査の対象となる割合は全体の一部ですが、調査の結果、申告内容に不備が見つかれば、追徴課税や加算税が発生する可能性があります。税務調査は、税務署が直接家庭や会社を訪問する現地調査と、書類確認を主とする机上調査の2種類に分けられます。

税務署が税務調査を行う理由

税務署が税務調査を行う主な理由は、相続税の適正な徴収を目的としています。税務署は、申告された相続財産が全て正確に記載されているか、財産の評価が適正に行われているかを確認します。不正申告や財産隠しが発覚すると、追加の税金やペナルティが課されることがあります。また、税務調査には公平性を保つ役割もあります。他の納税者に不平等が生じないよう、適正な税務管理を目指しています。

特に高額な財産や遺産分割の状況が複雑な場合、税務署は注意深く申告内容を確認します。例えば、相続財産に含まれる不動産の評価が市場価格と大きく異なる場合や、申告された現金預金の動きに不明瞭な点がある場合、税務調査の対象となりやすいです。

税務調査が入るケースとその基準

税務調査が行われるケースには、以下のような特徴があります。

  • 財産規模が大きい場合:高額な財産を所有している場合、税務署は財産の全容を把握するため、調査を行うことがあります。
  • 預金の出入りが大きい場合:大きな金額の現金が頻繁に動いていると、名義預金や現金の隠匿を疑われる可能性があります。
  • 不動産評価に疑問がある場合:申告された不動産の評価額が周辺地域の相場とかけ離れている場合、不正な評価を疑われることがあります。

例えば、故人の預金通帳に多額の引き出し記録があり、その用途が不明な場合、税務署はその金額が隠された相続財産であると考えることがあります。また、相続人間で遺産分割の争いがあった場合、申告内容の正確性が疑われるため、調査が行われやすい傾向があります。

調査が行われるタイミングと流れ

税務調査は、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)から約1年〜2年後に行われるのが一般的です。税務署は事前通知を行い、調査日程を調整します。当日は税務署職員が訪問し、申告内容や関連書類を確認します。具体的な流れは以下の通りです。

  1. 事前通知:税務署から調査の連絡が入り、日程が決定します。
  2. 調査当日:税務署職員が現地を訪問し、財産目録や申告書類を詳細に確認します。
  3. 追加資料の提出:必要に応じて追加資料を求められる場合があります。
  4. 調査結果の通知:調査後、税務署から調査結果が通知されます。不備が見つかった場合、追徴課税が行われる可能性があります。

調査に備えるためには、事前に書類を整え、必要な情報をすべて把握しておくことが重要です。

税務調査で指摘されやすいポイント

申告漏れが起きやすい項目

相続税の申告で漏れやすい項目として以下が挙げられます。

  • 現金や預金:特に故人のタンス預金や名義預金は見落とされやすい項目です。
  • 未申告の土地や建物:固定資産税の納付記録などで容易に判明するため、注意が必要です。
  • 株式や有価証券:証券会社の取引記録を税務署が把握している場合があります。

例えば、故人が生前に家族名義で預金を作成していた場合、それが相続財産に含まれると見なされる可能性があります。このような名義預金の問題を防ぐためには、すべての財産を正確にリストアップし、専門家に確認してもらうことが重要です。

不動産評価の見直しとリスク

不動産の評価額を低く申告すると、後から調査で指摘される可能性があります。不動産評価には、路線価や固定資産評価額が用いられますが、評価額が実勢価格とかけ離れていると税務署から疑われることがあります。

例えば、相続人が所有する土地が市街地に位置し、その近隣で大規模な開発が進んでいる場合、地価が高騰している可能性があります。そのような状況下で、申告した評価額が過去のデータに基づくものであると、調査の対象となるリスクが高まります。

現金や預金の申告漏れに注意

現金や預金の申告漏れは税務調査で頻繁に指摘される問題のひとつです。特に、故人が生前に多額の現金を引き出していた場合、その使途が不明だと税務署はその金額を相続財産に含める可能性があります。また、タンス預金と呼ばれる自宅で保管されている現金も相続財産に含まれるため、注意が必要です。

例えば、故人が所有していた通帳に多額の引き出し履歴があり、その使い道について明確な説明ができない場合、税務署はその金額を未申告の財産として扱うことがあります。これを防ぐためには、相続人が全ての現金の流れを把握し、必要に応じて税理士のアドバイスを受けることが重要です。

遺産分割協議書の不備がもたらす影響

遺産分割協議書に誤りや不備がある場合、税務調査で問題視されることがあります。例えば、協議書に記載された財産の分配内容が不自然であったり、財産の一部が記載されていなかったりすると、税務署は財産隠しの可能性を疑います。このような問題が発生すると、相続人全員が追徴課税の対象となる可能性があります。

正確な遺産分割協議書を作成するためには、専門家のサポートを受けることが推奨されます。また、全ての財産を正確にリストアップし、分配の根拠を明確にすることが重要です

遺産分割協議については、「【遺産分割協議とは】相続トラブルを避けるために知っておくべきこと」で詳しく説明しておりますのでご参照ください。

相続税の税務調査に備えるための対策

正確な財産目録の作成方法

財産目録は相続税の申告において重要な役割を果たします。すべての財産をリストアップするためには、税理士に依頼するなどして、以下の手順を踏むと効果的です。

  1. 不動産、預貯金、株式、生命保険などをカテゴリごとに分ける。
  2. 各財産の評価額を市場価格や路線価に基づいて算定する。
  3. 故人が所有していたすべての口座の明細を確認し、取引履歴も記録する。

具体例として、ある家庭では故人が不動産を複数所有していましたが、評価額が過去のデータに基づいて低く見積もられていました。これにより税務調査の対象となったため、税理士に相談し、再評価を行いました。

適正な不動産評価を行うポイント

不動産評価では、路線価や公示地価だけでなく、不動産の利用状況や形状、アクセスなども考慮する必要があります。不動産鑑定士の助言を受けることで、税務署が納得する適正な評価が可能になります。

具体的には、農地や居住用不動産など、特例が適用できる場合があります。これにより、評価額を適切に調整し、納税額を最小限に抑えることが可能です。

申告前にできる予防策とは?

相続税の税務調査を回避するためには、次の予防策を講じることが有効です。

  • 財産評価や分割内容、申告までの手続を税理士に担当してもらう
  • 申告書類を全て揃え、誤りや不備がないか税理士にチェックを依頼する。
  • 相続人間で透明性のある情報共有を行う。

税務調査後に適切に対応する方法

税務調査の結果、修正申告や追加納税が必要になった場合は、速やかに対応することが重要です。税務署の指摘内容を確認し、税理士に相談しましょう。

専門家の役割と活用方法

税理士の役割|相続税申告と税務調査の対応

税理士は、財産の評価や申告書類の作成、税務調査への立ち会いなどを行います。特に相続税専門の税理士を選ぶことで、税務署との交渉もスムーズになります。

司法書士の役割|遺産分割や登記手続きのサポート

司法書士は、遺産分割協議書の作成や不動産の名義変更手続きなどを担当します。これにより、相続手続き全体がスムーズに進むだけでなく、資料に基づいて正確な遺産分割協議書などの作成を行いますので、税務調査での指摘リスクも軽減できます。

日本相続知財センター札幌の役割|ワンストップでのサポート

相続に関するすべての手続きを一括して支援するのが特徴です。特に初めての相続手続きに不安がある方にとって、強力なサポートとなるでしょう。特に相続税申告においては、相続専門の税理士と連携して、他の手続きも含めトータルサポートを実現します。初回無料相談ですので、安心して相談することが可能です。

よくある質問(Q&A)

  • 相続税の申告者全体のうち、税務調査が行われるのは約20%程度と言われています。この確率は申告内容の複雑さや財産の規模によって変動します。例えば、財産の総額が1億円を超える場合や、不動産が多数含まれている場合には、税務調査の対象となる確率が高まる傾向にあります。また、申告内容に不明瞭な点があったり、明らかに低評価で申告されている項目があった場合も、調査が行われる可能性が高まります。

    さらに、故人の財産管理に不備があるケースや、申告期限ギリギリでの提出が多い場合も調査対象となりやすいです。したがって、早めに正確な申告を行うことでリスクを減らすことができます。

  • 税務調査で否認されるケースとして、以下のような事例が典型的です。

    1.不動産評価の過少申告:土地や建物の評価額が市場価格や周辺の路線価と大きく異なる場合、税務署から評価の見直しを求められることがあります。

    2.名義預金の隠匿:例えば、故人の財産が家族名義に移されている場合、それも相続財産として扱われることがあります。

    3.現金の未申告:タンス預金や、故人が亡くなる直前に引き出した多額の現金も、申告漏れとして指摘されやすいです。

    具体例として、名義預金を指摘された事例では、家族名義の預金が故人の収入と直接関連していると判断された場合に、追加の納税が求められることがあります。このようなケースを防ぐためには、申告時に全財産を正確に記録し、税理士に相談することが重要です。

  • 通常、相続税の申告から1〜2年後に税務調査が行われることが多いですが、例外的に数年後に調査が行われる場合もあります。これは、申告内容に後から疑義が生じた場合や、他の納税者の調査の過程で関連する情報が発覚した場合に起こり得ます

    例えば、故人が生前に不動産を譲渡していたことが後に判明した場合や、第三者の通報によって新たな事実が発覚した場合、追加の調査が行われることがあります。このため、申告時にすべての財産と取引を正確に記録し、保存しておくことが重要です。

  • 税務署から調査の連絡が来た場合、以下の手順を踏むことが重要です。

    1.冷静に対応する:連絡を受けた際、驚いて不要な情報を提供することを避け、まずは状況を整理します。

    2.専門家に相談する:税務調査の連絡を受けたら、速やかに相続税申告を担当した税理士に相談し、対応方針を決めます。

    3.書類を整える:財産目録や申告書類を確認し、不足があれば補完します。

    また、税務署が求める追加資料や質問事項には誠実に対応することが重要です。不明な点がある場合は専門家を通じて確認を行い、適切な情報を提供しましょう。

  • 税務調査で税理士に依頼する最適なタイミングは、税務署から連絡が来た段階です。特に以下のような場合には早めの相談が推奨されます。多くの場合は、相続税申告を担当した税理士に担当してもらいます。

    ・相続財産が高額である場合。

    ・名義預金や評価額に不安がある場合。

    ・相続人間で意見が分かれている場合。

    早期に税理士を依頼することで、調査への準備が整い、不安やリスクを軽減できます。税務調査は申告内容を精査する重要なプロセスですが、適切に対応すれば大きな問題には発展しません。税理士に依頼して的確な対応を行いましょう。

この記事の監修者

税理士法人 中野会計事務所  税理士 湯山 啓太

税理士法人 中野会計事務所
税理士 湯山 啓太

大学卒業後、複数の会計事務所において法人税業務に加え、個人および法人の相続・贈与・事業承継などの資産税業務の担当として勤務したのち、2019年10月より税理士法人中野会計事務所に所属。千葉県税理士会 所属、登録番号118096。相続税申告を数多く手掛け、個人から法人まで税務についての幅広いサービスを提供している。

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