生前贈与の持ち戻しが7年に延長!相続税対策を理解し賢く対応するための完全ガイド
近年、相続税の計算におけるルールが改正され、これまで3年間だった「生前贈与の持ち戻し期間」が「7年間」に延長されました。この変更により、相続税対策の一環として生前贈与を検討している方々の間で、「生前贈与は何年前まで遡って影響を受けるのか?」「これから贈与を行う場合、どのような注意点があるのか?」といった不安や疑問が高まっています。
この記事では、生前贈与の基礎知識から持ち戻し期間の詳細、さらに税制改正後の影響や具体的な相続税対策までを徹底解説します。また、専門家の役割や相談時のポイントについても触れ、これからの相続税対策に役立つ情報を網羅的に提供します。
正しい知識を持つことで、生前贈与を賢く活用し、相続税の負担を軽減することができます。この記事を読み終える頃には、生前贈与についての不安が解消され、明確な行動計画を持つことができるでしょう。それでは、内容を深掘りしていきましょう。
生前贈与の基本知識
生前贈与とは?その目的とメリット
生前贈与とは、生きている間に自分の財産を家族や親しい人に渡すことを指します。これは、亡くなった後に遺産分割で争いが起きることを避けたり、相続税を減らしたりする目的でよく行われる方法です。たとえば、親が自分の子どもに土地やお金を贈る場合、その行為が生前贈与にあたります。
具体的には、金銭、不動産、株式、さらには車や貴金属などあらゆる財産が対象になります。通常、財産を渡す際には贈与税が課されますが、一定の条件を満たすことで税金を軽減したり、免除される場合もあります。
では、なぜ生前贈与が注目されるのでしょうか?その理由を次で解説します。
生前贈与を行う目的とメリット
生前贈与が行われる主な目的には、次のようなものがあります。
1. 相続税の軽減
相続税は、亡くなった人から財産を引き継ぐ際に発生する税金です。この税金は財産の総額によって計算されるため、財産が多ければ多いほど税額も高くなります。生前贈与を活用することで、財産を少しずつ分割して受け渡すことができ、相続時の負担を軽減できます。
2. 遺産分割のトラブル防止
遺産をどう分けるかは、家族間で争いの原因になることが少なくありません。財産を生前に分けておくことで、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。
3. 子どもや孫への早めの支援
若い世代に早めに財産を渡すことで、住宅購入や教育資金など人生の重要な時期に役立ててもらうことが可能です。特に住宅資金や学費のような大きな支出に対しては、利用できる特例制度も存在します。
生前贈与を行う際の注意点
一見便利に思える生前贈与ですが、注意すべき点もいくつかあります。
まず、年間110万円を超える贈与には贈与税が課税されるため、計画的に行うことが重要です。また、贈与を受けたものの使い道や管理についても、家族間で事前に話し合っておくことが必要です。
さらに、子どもに財産を贈った後で状況が変わり、元に戻す必要が出てくる場合も考えられます。しかし、一度贈与した財産を取り戻すことは法律的に非常に難しいため、慎重な検討が求められます。
生前贈与の持ち戻し期間と「何年前まで」の影響
生前贈与 持ち戻し期間とは?
生前贈与の持ち戻し期間とは、相続税の計算時に、生前贈与された財産を相続財産に加算して計算する期間のことを指します。具体的には、被相続人(亡くなった人)が生前に行った贈与が、相続税の課税対象となるかどうかを判断する基準となります。
従来の税制では、この持ち戻し期間は「3年間」とされていました。しかし、2023年の税制改正により、この期間が2024年1月1日以降の贈与については「7年間」に延長されました。これにより、一部の生前贈与が相続税の計算に影響を与える可能性が高まりました。
相続税計算時の「7年ルール」とは|2023年税制改正の詳細
2023年の税制改正により、生前贈与の持ち戻し期間が7年に延長されました。この改正の背景には、相続税の適正な課税を目指す意図があると考えられます。
「7年ルール」とは、被相続人が亡くなる前の7年間に行われた贈与が、相続税の課税対象となるルールです。
生前贈与が7年以上前の場合はどうなる?
2023年の税制改正により生前贈与の持ち戻し期間が「7年」に延長されたとはいえ、贈与が行われたのが7年以上前であれば、原則として相続税の課税対象には含まれません。つまり、被相続人(亡くなった人)が亡くなる前の8年前や10年前など、7年以上前に実施された贈与は「持ち戻し」の対象外となるのが基本的な考え方です。
ただし、注意すべき点がいくつかあります。以下のような特殊なケースに当てはまる場合、7年以上前の贈与であっても相続税計算時に考慮される可能性があります。
- 死因贈与に近い性格の贈与
亡くなる直前に「死んだら贈与する」という約束(死因贈与)が交わされていたような場合、実質的に亡くなる直前の贈与とみなされるリスクがあります。 - 遺留分侵害額請求が発生するケース
法定相続人の遺留分を侵害するような贈与が行われていた場合、7年以上前の贈与でも法的トラブルに発展する可能性があります(これは相続税の持ち戻しとは別の問題ですが、相続全体の紛争要因になり得ます)。この場合は10年が遺留分侵害請求の持ち戻し期間となります。
上記のような特殊事情がなければ、7年以上前の贈与は持ち戻し対象にならないため、相続税の負担を大きく左右することは少ないでしょう。しかし、実際にはどの時点で贈与が行われたのか、贈与契約の形態がどうなっているのかといった事実関係をしっかり示す必要があります。贈与時の書類や口座振込記録などを保存しておくことが望ましいでしょう。
生前贈与 何年前まで遡るべきかの具体的なケーススタディ
「何年前までの贈与が相続税の計算対象になるのか?」という疑問に対しては、先述の通り「7年」が基本的な目安になります。ここでは、複数のケーススタディを通じて、具体的にどのような考え方をするのかを確認してみましょう。
1. ケースA:5年前に不動産を贈与した場合
・贈与が行われたのは亡くなる5年前なので、7年以内の贈与に該当します。
・相続税計算時には、この不動産の贈与が持ち戻し対象となり、相続財産に加算されます。
・結果として、相続税の申告・納税額が増える可能性があります。
2.ケースB:10年前に多額の現金を贈与した場合
・亡くなる10年前の贈与なので、7年よりも前に行われたものです。
・原則として相続税の課税対象にはならず、持ち戻しを行わないことが一般的です。
・ただし、贈与の形態や目的が死因贈与に近いとみなされる場合などは、争いの余地が生じる可能性があります。
3.ケースC:毎年110万円以内で贈与を繰り返していた場合
・1回の贈与が110万円以下であれば、贈与税の申告が不要なケースもあります(暦年課税の基礎控除)。しかし、持ち戻しの対象となるのは代わりありません。
・ただし、亡くなる直前7年以内の贈与については、回数の合計が大きくなるほど持ち戻しされる財産が増えるので、相続税対策として一括で大きな額を贈与する場合よりも慎重に計算する必要があります。
これらのケーススタディを踏まえると、「何年前まで遡るべきか?」は基本的に7年が基準となります。7年より前に贈与を行う場合でも、目的や手続きによっては税務署から疑義をもたれるケースがないわけではありません。計画的に贈与を進める際には、必ず日付がわかる書類や振込記録を残すようにし、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
持ち戻しの対象とならない生前贈与について
持ち戻しの対象となるのは、法定相続人への生前贈与です。法定相続人とは、民法で定められた「被相続人の財産を取得できる人」をいいます。常に配偶者が含まれ、その他の順位として以下のとおり子ども(直系卑属)、両親(直系尊属)、兄弟姉妹の順で相続権が発生します。前の順位の相続人がいない場合に、次の順位が相続人となります。
①法定相続人以外でも持ち戻しの対象になる場合
- 代襲相続人
法定相続人がすでに亡くなっている場合、その子どもや孫が代襲相続人として財産を取得します。 - 受遺者(遺言による遺贈を受けた人)
遺言書によって財産を譲り受ける「受遺者」も、持ち戻しの対象となる可能性があります。 - 生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産を取得した人
これらも相続財産とみなされるため、持ち戻しの対象となることがあります。
②孫への生前贈与が対象となる例外
原則として、孫は法定相続人ではないため、生前贈与は持ち戻しの対象になりません。ゆえに相続対策として孫へ生前贈与することはよく見受けられることです。しかし、以下のケースでは例外として持ち戻し対象になることがあります。
- 養子縁組によって孫が法定相続人になった場合
- 代襲相続によって孫が相続人になる場合
いずれも「特別受益」として扱われ、持ち戻しの対象になる可能性があります。
また、遺言による遺贈や生命保険金、死亡退職金などのみなし相続財産を受け取る場合も、持ち戻しの対象となる可能性があります。そのため、孫へ財産を残す方法を選ぶ際には、こうしたルールを理解し、慎重に検討する必要があります。
③相続時精算課税制度の基礎控除110万円は持ち戻しの対象外
生前贈与には大きく分けて「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方法がありますが、相続時精算課税制度を選択した場合、以下の点がポイントです。
1. 2,500万円までの特別控除
- 贈与者(父母や祖父母など)から受贈者(子や孫)が一括して贈与を受ける場合、合計2,500万円までは贈与税がかかりません。
- ただし、その分は将来の相続時に精算されるため、相続税計算時に合算されます。
2. 年間110万円の基礎控除の扱い
- 暦年課税制度を使わない(相続時精算課税を選択した)贈与分については、一般に「年間110万円の基礎控除」は適用されません。
- 一方、相続時精算課税を使う贈与のうち「基礎控除110万円相当分」については、相続税の持ち戻し計算に加算されない(“課税対象外”かつ“持ち戻し対象外”扱い)とされます。
相続時精算課税制度については、「相続時精算課税制度とは?賢く利用して適切な税対策をしよう!」にて詳しく解説しておりますのでご参照ください。
生前贈与を活用した相続税対策と方法
生前贈与は、相続時の課税対象となる財産をあらかじめ減らすことで、相続税を抑える有力な方法です。ただし、贈与税や持ち戻し期間、家族間のトラブルリスクなど、慎重に検討すべきポイントも多く存在します。ここでは、具体的な対策と活用方法を解説します。
生前贈与を活用する3つの節税メリット
1.課税対象財産の圧縮
生前のうちに財産を少しずつ移しておくことで、相続時に被相続人が保有する財産の総額を減らすことができます。結果として、相続税の課税額を引き下げることにつながります。
2.各種特例制度の活用
・住宅取得等資金の贈与税非課税制度
一定の条件を満たせば、子どもや孫が住宅を取得するための資金を贈与する場合、贈与税の非課税枠が拡大される特例があります。
・相続時精算課税制度
2,500万円までの贈与であれば贈与税がかからず、一括して相続時に精算できる制度です。将来的に相続税を低減できるケースもありますが、使い方によっては逆に税負担が大きくなるリスクもあるため注意が必要です。
住宅取得資金贈与については、「住宅取得資金贈与で叶えるマイホーム!特例制度を徹底解説」にてわかりやすく解説していますのでご参照ください。
3.早期サポートによる資産活用
子どもや孫に早めに資金を渡すことで、住宅購入、教育資金、起業資金などに役立ててもらうことができます。相続発生前に有効活用してもらうことで、結果的に家族全体の資産を合理的に運用できるメリットがあります。
生前贈与を成功させるための注意点
- 贈与税の申告と管理
毎年の贈与額が110万円を超える場合は、贈与税の申告が必要になります。申告漏れがあると後々追徴課税が発生するリスクがあるため、しっかりと書類管理をすることが大切です。 - 契約書や振込記録の保存
贈与が本当にあったかどうかは、税務調査の際に問題となりやすい部分です。贈与契約書を作成したり、銀行振込で贈与を行うなど、客観的な証拠を残すことが重要です。 - 家族間での十分なコミュニケーション
いくら税金面で有利になるとしても、家族間で将来の財産分配について合意が取れていないと、相続の際にトラブルが起きる可能性があります。事前によく話し合い、贈与の目的や分配方針を共有しておくことが大切です。
生前贈与を行うタイミングと事前準備のポイント
- 余裕をもって計画を立てる
税制改正により持ち戻し期間が7年に延長されたため、相続直前になって慌てて贈与を行っても、思ったほど効果が得られないケースがあります。早めから贈与計画を立てることで、暦年課税や特例を組み合わせた最適なプランを練りやすくなります。 - ライフステージと資金需要の見極め
例えば、子どもが結婚や出産、住宅購入、留学を検討しているタイミングに合わせて贈与を行えば、税メリットだけでなく家族の生活設計にもプラスになります。 - 事前に専門家へ相談する
「どのタイミングで、どのくらいの金額を、どの制度を使って贈与するか」は個々の家庭状況や財産構成によって最適解が異なります。税理士や弁護士など専門家と相談して、個別事情に合わせたプランを立てることが安全策となります。
生前贈与~トラブル回避のための具体的対策
- 贈与の意図を明確化する
親子や孫との間で「なぜ今、この財産を渡すのか?」を共有しておくことが大切です。思わぬ疑念や不満を防ぎます。 - 分割贈与の計画表を作成する
暦年課税の110万円控除を有効に使うには、毎年コツコツと贈与を行う方法が一般的です。誰に、いつ、どのくらい贈与するのかを事前に表やカレンダーで管理すると、忘れやミスを防止できます。 - 遺言書との整合性を取る
生前贈与を進める一方で、既に作成してある遺言書の内容と整合性が取れていないと、後で相続人が混乱する場合があります。必要に応じて、遺言書の見直しも同時に検討しましょう。
生前贈与における専門家の役割
生前贈与は家族の将来を左右する重要な手続きです。税金や法律の知識が必須となるうえ、家族関係にも大きく影響を与えるため、専門家と連携して計画を立てることが望ましいといえます。
税理士や法律専門家の重要性
- 税務アドバイス
税理士は、贈与税や相続税の申告方法、特例制度の活用法などを把握しており、最適な節税プランを提案してくれます。 - 法律リスクの回避
弁護士や司法書士など法律専門家は、贈与契約書の作成や遺言書との整合性チェックなど、法的トラブルを回避するために不可欠な役割を担います。 - 紛争調整役
生前に家族間で意見の相違がある場合、専門家が中立的な立場で助言し、最適な落としどころを探るサポートを行います。
日本相続知財センター札幌のサービス内容と強み
相続や贈与に関する総合的なサポートを提供しているのが、日本相続知財センター札幌のような専門機関です。以下のような特徴や強みが挙げられます。
- 税理士・弁護士など専門家のネットワーク
各分野の専門家と連携しながら、ワンストップで相談を受け付けてくれるため、相談者の手間が大幅に省けます。 - 豊富な実績と事例
これまで数多くの生前贈与や相続対策を手掛けており、多様なケースに対応可能です。 - 地域密着型のサービス
札幌を拠点とし、地元の不動産事情や慣習にも精通しているため、より実践的なアドバイスが期待できます。
また、初回は、無料相談ですので、安心して相談することができます。
専門家に相談するタイミングとそのメリット
生前贈与の検討を始めた段階で早めに専門家に相談するのが理想です。以下のようなメリットがあります。
- 最適な贈与プランの立案
漏れのない贈与計画を練ることで、節税効果と家族間の公平感を両立しやすくなります。 - 税務トラブルの回避
事前に贈与税や相続税のポイントを押さえておくことで、申告漏れや誤申告を防ぎ、追徴課税リスクを低減します。 - 法的リスクへの対処
遺言や遺留分など法的リスクを含め、総合的に対策が打てるため、将来の紛争を未然に防げます。
生前贈与や相続対策を専門家に依頼する際の注意点
- 費用面の確認
相談料や書類作成料など、専門家に依頼すると一定のコストがかかります。事前に見積もりや報酬体系を確認しておくことが重要です。 - 専門分野の得意・不得意
税理士でも相続・贈与に特化している人とそうでない人がいます。実績や得意分野を確認したうえで依頼先を決定しましょう。 - 複数の専門家との連携
税理士と弁護士、司法書士、不動産鑑定士など、必要に応じた連携をスムーズに行える体制が整っているかをチェックすると安心です。
よくある質問(Q&A)
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2023年の税制改正で決定された「7年ルール」は、基本的に2024年以降に発生する相続から適用される予定とされています。施行時期については、国税庁などの公的機関の最新情報を必ずご確認ください。
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亡くなる前の7年以内に行われた複数回の贈与は、基本的に合計額が相続税計算に加算されます。贈与税を支払っている場合は、その金額を差し引いて相続税額が算出されます。贈与ごとに正確な記録を残しておくことが大切です。
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贈与税は、贈与を受けた人(受贈者)が翌年の2月1日から3月15日までに申告し、納税を行います。年間110万円を超える贈与を受け取った場合は申告義務が生じるため、注意しましょう。
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原則として、被相続人が亡くなる前7年以内に行った贈与は、相続人以外への贈与であっても持ち戻しの対象となる可能性があります。ただし、非課税の特例や実質的に遺贈に近い形態など、個別の事情によって扱いが変わるケースもあるため、専門家に確認することをおすすめします。
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生前贈与と遺言書は、それぞれ役割が異なるため、一概に「どちらが優れている」というものではありません。生前贈与は「早期に財産を移転することで相続税を低減する」狙いが強く、遺言書は「亡くなった後の遺産分割方法を明確にする」ための手段です。場合によっては、両方を組み合わせることでより効果的な相続対策になるケースもあります。
この記事の監修者

税理士法人 中野会計事務所
税理士 湯山 啓太
大学卒業後、複数の会計事務所において法人税業務に加え、個人および法人の相続・贈与・事業承継などの資産税業務の担当として勤務したのち、2019年10月より税理士法人中野会計事務所に所属。千葉県税理士会 所属、登録番号118096。相続税申告を数多く手掛け、個人から法人まで税務についての幅広いサービスを提供している。