LINE連載 「困った相続人」アーカイブ(#6〜#10)

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各エピソードの概要と共に、相続に関するトラブルやその解決策を学ぶことができます。気になるエピソードをチェックし、ぜひLINEでの連載配信にもご登録ください!

虎震(トラブル)家の困った相続人⑥~祖父母の代の相続関係

「ねぇ、兄さん、ち、ちょっと聞いてくれる?」 花子は焦りの色を浮かべた顔で、 「弁護士と実家の土地の名義を確認していたら、なんと、父さんと亡くなったおじいちゃんとの共有名義になっていることがわかったの・・・」

 「えっ!?父さん単独の名義じゃなかったのか?」

二郎は驚きました。

 「それじゃ、父さんの遺産分割だけじゃなくて、じいちゃんの名義変更も同時にやらなきゃならないのか…これは面倒だな。」

 「そうなの。じいちゃんの相続となると叔父さんや叔母さんが相続人なので、彼らと協議をしなければならないの。」

花子は困惑した表情で続けました。 

「マジかよ…しかも、亡くなってる叔父さんや叔母さんもいるよな。。」

二郎は頭を抱えました。

 「あ!叔父さんと言えば、あの『マタギ』の清六(せいろく)叔父さんが…。」

二郎と花子は顔を見合わせて凍りつきました。

『マタギ』とは熊を中心とした大型動物の狩猟を生業とする狩猟家です。

実は江戸時代から虎震家は狩猟を生業としており、今は清六が継いでいます。

 清六は今でも「伝説のマタギ」として自治体からの要請で、熊を駆除したりしているのでした。 が、清六は、近所でも評判の偏屈な頑固者で、過去に二郎達の父と相続の件で揉めていたとも聞いています。

今回の相続でも何を言い出すかわかりません。 

「やれやれ。どうなることやら…。」

 またもや前途多難な虎震家なのでした。 

教訓⑤:「祖父母の代の相続関係も念のため確認!」

虎震(トラブル)家の困った相続人⑦~清六叔父さんの要求

清六の家に到着すると、二人は深呼吸をして扉を叩きました。 しばらくして、清六が扉を開け、 「入れ。」と、無表情で二人を中に招き入れました。

 清六は猟銃を手入れしている途中だったらしく、部屋の中が硝煙の香りがしています。その焦げ付くような匂いが二郎と花子を一層不安にさせました。

 二郎と花子は、事の顛末を清六に伝え、きょうだいの遺産分割でもめていること、一郎が使いこみをしたらしいこと、その過程で祖父の名義の土地が出てきたことなどを話しました。

清六は無言のまま、二郎と花子の話を黙って聞いていました。 二人は、話が終わると、清六はしばらくの間、何も言わずに考え込んでいました。

その沈黙を破ったのは、清六の低くて鋭い声でした。 

「一郎をここに呼べ。今すぐにだ!」 

その言葉を聞いた二郎と花子は蛇に睨まれた蛙のように、動けなくなりました。 清六の真剣な表情から、何か重大なことがあると感じ取ったのです。 

抗いがたい空気の中、二郎は、

「わ、分かりました。すぐに連絡します。」

スマートフォンを取り出し、急いで一郎に電話をかけました。

 「あ?何の用だ?」

と気だるそうに一郎は電話に出ました。 が、二郎が清六の名前を出したことで急に声色が変わり、土地の件の経緯も聞くと、

 「わ、わかった。もうすぐ家を出るから待ってろ」

と慌てた様子で答えました。 

「一郎兄さんがこちらに来るそうです」

と二郎は清六に伝えると、清六は黙って頷き、猟銃の手入れを再開しました。

虎震(トラブル)家の困った相続人⑧~清六叔父さんの怒り

一郎が清六の家に到着すると、彼の顔には明らかな緊張の色が見えました。
二郎と花子が無言で部屋の隅に座っている中、清六は一郎に向かって鋭い視線を投げかけました。 

「一郎、お前に聞きたいことがある。最近、お父さんのお墓参りはしたのか?」

その質問に一郎は一瞬、驚いた表情を見せましたが、すぐに顔を伏せました。 

「最近は行けてない……忙しくて」

その答えを聞いた瞬間、清六の表情は怒りに満ち、彼の声はさらに低く冷たくなりました。 

「忙しいだと?お前がやったことを知っているぞ!使い込んだ金のこと、そして財産を独り占めしようとしていること。お前は家族を裏切っただけでなく、お父さんの魂まで汚しているんだ。お父さんに顔向けできるのか!」

一郎は顔を赤くし、口を開こうとしましたが、清六の激しい怒りに圧倒され、言葉が出ませんでした。 

「お前がこれからどうするつもりなのか、よく考えろ。そして、『オレは長男だからな!』というのなら、長男らしく、家族の前で責任を取る覚悟を決めろ。」 

清六の言葉に一郎は深く頭を垂れ、何も言えないままその場に立ち尽くしました。 そして、清六は二郎と花子にも鋭い視線を投げかけ、

「お前たちもお父さんの供養はしているのか?毎日手を合わせているのか?お父さんの供養をおろそかにして、遺産分けで揉めているなんて、人間として恥ずかしくないのか!」 

清六の怒りは二郎と花子の胸に突き刺さり、二人も何も言えません。

 「お前たちが揉めている間、オレはじいさんの土地の件、口利きをしてもやらんし、ハンコも押す気はない。よく考えておけ!」 

今回の教訓:遺産分割協議よりも、まずは供養を大切に。

虎震(トラブル)家の困った相続人⑨~清六の想い

一郎、二郎、花子が帰った後、清六は一人静かに部屋の奥で考え込んでいました。
彼の心には、昔の記憶が鮮明に蘇ってきます。 

「親父やお袋の相続のときもそうだった。俺たちきょうだいも揉めに揉めてしまったんだ。親父の土地の名義がそのままになっているのも、結局話がまとまらないまま、あの土地が残ったからだ。」 

「自分たちの子供の世代に、相続の争いをさせるのは絶対に避けたい、と心に誓ったのに。」

 今、目の前で同じことが起こっていたことに、清六は深い溜息をつき、心の中で自分に問いかけました。

 「もしかしたら、相続争いというものは、代々続くのかもしれない。遺伝なのか、因縁なのか?だが、この悪循環をここで断ち切らねばならないぞ」

 彼らのきょうだいが相続で争った時、自分は何もできず、ただ見守るしかなかった。
だが、今は違う。彼は自分の経験を活かし、正しい道に導く責任を感じていました。

「財産はいつか無くなる。しかし、家族の因縁や悪感情は代々伝わり、ずっと残っていく。目に見える財産よりも、目に見えない感情や絆がどれほど大切か。」 

「このことを一郎たちが分かってくれればいいのだが。」 

清六は静かに立ち上がり、窓の外を見つめました。
夜の静寂の中で、彼の決意は一層強まりました。

今回の教訓:財産など形あるものはいつか無くなる。しかし、目に見えない想いや感情はどういう形であれ、代々伝わるものだ。(清六)

虎震(トラブル)家の困った相続人⑩~一郎の懺悔

叔父清六に一喝された長男一郎は、改めて相続の話がしたい、ということで後日、二郎と花子を実家に呼びました。

リビングルームに集まった3人。

一郎は深く息を吸い込み、苦しげな表情を浮かべながら話し始めました。 

「二人とも、わざわざ来てもらってすまない。お父さんの遺産のことで、正直に話さなければならないことがあるんだ。」

 「お父さんのお金…実は一部使ってしまって…。事業がうまくいかず、また子供たちの進学にもお金がかかって、どうしても必要だった。でも、お金はまだ半分以上残っていて、違う金庫に隠しているんだよ…。」 

二郎は深いため息をつき、「やっぱりな」とつぶやきました。

「どうしてそんなことをしたんだ?」

 一郎は頭を垂れ、罪悪感に押しつぶされそうな声で答えました。

「正直に言うと、財産を一人占めしようとしてたんだ。みんながお父さんのことにあまり積極的に関わろうとしなかったのが、少し恨めしくてさ…」

 花子は「気持ちは分からなくないけど…。でもお父さんのお金を勝手に使うのは違うでしょう?」

一郎は深くうなずきました。

「そうだよな。俺が間違ってたんだ。本当にすまなかった。」

 「実は、昨日墓参りに行った後、亡くなった父さんが夢に出てきてさ。『もういいだろう?一郎』って笑顔でオレの頭を撫でてくれたんだよ。オレ、許してもらえるかな?」

 一郎の目から、涙が自然に零れ落ちました。 
二郎は少しの沈黙の後、ため息をつきながら言いました。

「分かったよ、兄さん。俺たちもお父さんのことをもっと考えなきゃいけなかった。でも、これからはちゃんとやろう。」

 花子も微笑みながらうなずきました。

「そうね。家族だから、一緒に乗り越えよう。」 

こうして、虎震家の3人は再び向き合い、真摯に遺産分割の話し合いを始めることになった。家族の絆を取り戻すため、彼らは新たな一歩を踏み出したのだった。


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