LINE連載 「虎震(トラブル)家の悩める人々~伝説のマタギ・清六の決断編」アーカイブ(#1〜#4)
公式LINEで連載配信している「虎震(トラブル)家の悩める人々~伝説のマタギ・清六の決断編」のアーカイブページです。
各エピソードの概要と共に、相続に関するトラブルやその解決策を学ぶことができます。気になるエピソードをチェックし、ぜひLINEでの連載配信にもご登録ください!
目次
虎震(トラブル)家の悩める人々~伝説のマタギ・清六の決断①

雪深い山奥、虎震家の血を引く「伝説のマタギ」清六は、今日も愛用の銃を背負い、山を歩いています。
一郎、二郎、花子の相続の時に活躍した彼です。
自治体の依頼で熊の駆除を請け負いながら、質素な生活を送っていますが、実は彼にはもう一つの顔がありました。
「ワシは山の王者・マタギ清六よ。獲物を仕留めるのにかけては右に出る者はおらん……が、実は相場の世界でもそれなりに腕が立つんじゃ。」
そう、清六は密かに株の運用を趣味としており、その資産はなんと10億円近くにのぼります。
江戸時代から続く炭焼き小屋の奥には、熊の毛皮の隣に最新型PCと数台のモニターが鎮座しており、マタギの時間以外はほぼ株の取引に没頭しているのです。
「ワシが山で獲るのは熊だけじゃねぇ。市場の波を読んで、な……ほれ、また上がった! フッフッフ、熊だけじゃなくて“ブル”も仕留めるワシよ。」
しかし、そんな資産を持っているとは誰も知りません。
清六は相変わらず、何百年前かという服装をして、近隣の人々からは「頑固な偏屈者」と思われています。
虎震(トラブル)家の悩める人々~伝説のマタギ・清六の決断②

久しぶりに山を下りた清六は、街の空気に違和感を覚えていました。
「なんじゃ、この騒がしさは……人が多すぎる!空気も汚いし、まったく、山の静けさが恋しくなるわい」
久々の都会の喧騒に、早くも辟易しながらも、目的はただ一つ。
二郎に会い、財産の管理と自分の今後について相談することでした。
しかし、問題はそこにたどり着く前にあったのです。
「そういや、二郎の家ってどこじゃったかのぉ……電話するか? 」
清六は普段、山での生活が中心であるため、携帯電話の充電を忘れがちでした。
案の定、手に取ったガラケーはすでに電源が切れており、役に立ちません。
「クソッ、やっぱり文明の利器は信用ならん!ワシの記憶力に頼るしかないか……」
清六は、うろ覚えの記憶を頼りに二郎の家へ向かいました。
しかし、街の風景はいつの間にか変わっており、見覚えのある道が見つかりません。
道に迷いながらも、なんとか二郎の家にたどり着いた清六。
しかし、玄関の前に立った瞬間、ふと足が止まりました。
「……さて、なんて言えばええんじゃ?」
清六は、熊を仕留めるときすら迷わない男です。しかし、今日ばかりは頭を抱えました。
「久しぶりに来た」と言えばいいのか、それとも単刀直入に「ワシの面倒を見てくれ」と頼むべきなのか。
「なんじゃ、ワシは熊よりも人間相手の方が苦手なんか……。情けない話よ」 そんなことを考えているうちに、扉が開きました。
そこに立っていたのは、まさに探し求めていた二郎でした。
「……お、叔父さん!?どうしたんですか、こんなところまで?」
二郎の驚いた顔に、清六は思わず咳払いをしました。
「べ、別に大したことじゃない。ちょっと話があってな」
「話……?」
「まぁ、まずは茶でも淹れてくれんか。ワシは長旅で喉がカラカラじゃ」
清六は気まずさを誤魔化すように玄関をくぐりました。
はたして、清六は二郎に自分の思いを伝えることができるのでしょうか……?
虎震(トラブル)家の悩める人々~伝説のマタギ・清六の決断③

二郎の家に上がり込んだものの、清六は何やらソワソワしています。
熊相手には毅然と振る舞う男も、いざ人間相手となると急に照れくさくなるのか、落ち着きがありません。
「叔父さん、そんな端っこに立ってないで、こっち座ってくださいよ。お茶、淹れてきましたから。」
「あ、ああ……すまんのう…💦」
清六はもじもじと腰を落ち着けると、湯呑みを手に取り、無言でひと口啜ります。
湯気がほんのりと顔を覆い、さらに照れくささを上塗りしているかのようです。
清六は落ち着かない様子。どんな猛獣を相手にするよりも、今この場が緊張のピークに違いありません。
「な、なあ二郎……実は、ワシは……」
「ん? 叔父さん、なんですか? はっきり言ってくださいよ」
清六は唸り声をあげますが、その声にはどこか悲壮感すら漂います。
意を決して口を開きました。
「ワシが死んだ後の遺産を、ぜんぶお前に託したいんじゃ。それとな、認知症になったりしたら……その、財産の管理をしてほしいんじゃ!」
「叔父さん……」
驚いた表情を浮かべつつも、二郎の目は優しさを帯びています。
「わかりました。もちろん引き受けますよ。大事なことですもんね。せっかくなら専門家にきちんと相談しませんか? ぼくの知り合いに郷行政書士さんがいるので、一緒に行きましょう!」
「ほ、本当か? よかった……。」
あれほど迷っていた清六でしたが、二郎の返事を聞いてからは、少しずつ表情も明るくなっていきます。
「じゃあ、明日にでもアポ取りますから、叔父さんは山に帰らず、今日うちでゆっくりしてください。……あ、そういえば替えの服とか、どうします?」
「ぬ、ぬかった! こんな都会に泊まるなんて想定外じゃ!ワシは山の寝床が恋しいが……まあ仕方ない、借りるか。。」
二郎に提案され、タジタジと苦笑する清六。
都会の夜が少し苦手なマタギも、今夜は身内の優しさに包まれて過ごすことになりそうです。
虎震(トラブル)家の悩める人々~伝説のマタギ・清六の決断④

二郎に連れられて再び郷行政書士の事務所を訪れた清六は、大きなため息をつく。
熊を仕留めることに比べれば朝飯前だと思っていた“遺言書作成”が、意外にも手間が多く感じるのだ。
「いやな、わしは独身で子もおらん。きょうだいもいるが亡くなっていたり疎遠でな。で、この10億ほどある株の資産を、全部二郎に譲りたいんじゃ」
清六がぽつりと告げると、二郎は驚きを隠せない。
「そんなに株を持っていたなんて……一体どこで?」
「そりゃ山で暮らしとっても、情報収集は欠かさん。熊より怖いのは下落相場じゃからのう。」
郷行政書士は苦笑しつつ、テキパキと説明を始める。
「きょうだいがご健在なら法定相続人ですが、清六さんが二郎さんのみに株を含む全財産を譲るには遺言書が必須です。特に額が大きいので、公正証書遺言が望ましいでしょう!」
「あの山奥で紙切れ一枚書くだけじゃダメなんか?」
「自筆証書遺言でも可能ですが、紛失や偽造リスクを考慮すれば、公証役場で正式に作成した方が安心ですよ。」
清六は渋い顔をしながらも、書類一式を受け取り目を通す。
「熊狩りよりは気が楽じゃろう…と思ってたが、なかなか骨が折れるのう🤔」
二郎はにこりと笑い、
「でも、叔父さんの大事な財産です。僕も書類作成、ちゃんと手伝いますから。」
と頼もしげに言う。
「そうじゃな、後は、わしが病気などになって自分のことが出来なくなったら、二郎に財産の管理なんかを任せたいんだが、それも何か手立てはあるのかな?」
郷行政書士はうなずき説明を始める。
「はい、身体が不自由になったり認知症になったりする場合に備えて、財産管理委任契約や任意後見契約という契約を、二郎さんと事前に結んでおいたほうが良いですね。これから詳しく説明しましょう!」
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