入院中でも遺言作成はできる?病院で公正証書遺言を作成する方法

入院生活を送っていると、「もしもの時に備えて遺言を作っておきたい」と考える方は少なくありません。特に大きな病気の手術を控えているときや、余命を宣告されたときには、「自分の財産をどのように分けるのかを明確にしておきたい」と強く思うものです。

実は、入院中でも 公証人の出張制度 を利用すれば、公正証書遺言を作成できます。重要なのは、「何を準備すればよいのか」「どの専門家に相談すべきか」「病院や医師とどのように連携するのか」を正しく理解し、限られた時間の中で行動に移すことです。

読み進めていただければ、入院中でも安心して遺言を残すための手順と心構えが理解できるでしょう。

入院中でも遺言作成はできる?基本知識と仕組み

入院中に遺言を作りたい人が増えている背景

高齢化社会が進むにつれて、入院中に遺言を望む方が急増しています。厚生労働省の統計によれば、日本人の平均入院日数は欧米よりも長く、特に高齢者は数週間から数か月の入院生活を送ることも珍しくありません。その間に「もし自分に何かあったら」と考え、遺言を検討するケースが増えています。

また、近年は医療技術の進歩で「生かされる期間」が長くなったことも背景にあります。命の危険を感じる状況ではなくても、「病床で動けない間に準備しておきたい」というニーズが生まれているのです。

遺言の種類と「公正証書遺言」が推奨される理由

遺言には大きく3種類あります。

  • 自筆証書遺言:自分で全文を書く形式。費用はかからず手軽ですが、形式を間違えると無効になります。
  • 秘密証書遺言:内容を秘密にできる方法。ただし利用は稀で、実務上あまり選ばれません。
  • 公正証書遺言:公証人が作成するもの。法的効力が最も確実で、家庭裁判所の検認も不要です。

入院中の方には、確実性の高い 公正証書遺言 が圧倒的に推奨されます。理由は「本人が病床にいるため形式不備を避けたい」「後に家族間で争いを起こさないために、公的な証明が必要」だからです。

病院からでも可能な遺言作成の方法

公証人は役場に常駐していますが、本人が役場まで出向けない場合は「出張制度」を利用して病院まで来てくれます。ベッドの上で公証人と証人に立ち会ってもらい、遺言を口述するか、意思を示すことで作成が可能です。

ただし、証人が最低2人必要であることや、事前に遺言内容を公証人と打ち合わせる必要があるため、時間的な余裕を持って準備することが大切です。

入院中に遺言を作成するメリット・デメリット

メリット

  • 体調が悪くても安心して確実に手続きできる
  • 後々の家族間トラブルを防げる
  • 法的効力が強いため、裁判所の検認不要

デメリット

  • 出張費や日当など費用がかかる
  • 病院との調整が必要で、時間がかかる
  • 本人の体調次第で予定通り進まないことがある

入院中に公正証書遺言を作成する手順

公証人の出張制度とは?利用できるケース

公証人は「本人が高齢や病気で外出できない」と認められる場合に、病院や施設へ出張して遺言を作成してくれます。これにより、足腰が弱っている方や集中治療中の方でも、安心して遺言を残すことが可能です。

利用例としては、

  • がんの手術を控えている70代男性が、入院中に遺言を作成
  • 脳梗塞で半身麻痺になった80代女性が、病院の個室で公証人を呼んで遺言を口述

といったケースがあります。

必要な書類と準備するべきもの

遺言を作成する際には、以下の書類が必要です。

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 財産資料(不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書、預金通帳など)
  • 相続人の戸籍謄本等
  • 遺言執行者を指定する場合はその資料
  • 医師の診断書(判断能力に疑義がある場合)

診断書は特に重要で、公証人が「本人に判断能力があるか」を確認するための客観的証拠となります。

遺言作成にかかる費用と日数の目安

  • 公証人手数料:数万円~数十万円(財産額によって計算される)
  • 出張加算:基本手数料の50%
  • 専門家への依頼料:10万円~30万円程度が目安
  • 必要日数:書類が揃っていれば1~2週間程度

なお、入院中の場合は「できるだけ早く」という要望が多いため、専門家が先回りして書類を揃えておくことが成功のポイントです。

実際の流れ:病院で公正証書遺言を作る場合のステップ

  1. 専門家に相談して内容を整理
  2. 必要書類を専門家とともに集める(戸籍、財産資料など)
  3. 公証人と専門家を通じて打合せ(出張を依頼)
  4. 病院で本人の意思を確認し、公証人が遺言を作成
  5. 本人と証人が署名押印して完成

この流れをスムーズに進めるためには、専門家と病院との調整が不可欠です。

入院中に遺言作成を行う際の注意点と事例

判断能力の有無が重要になる理由

遺言は「本人の自由な意思」が大前提です。たとえ病院のベッドにいても、内容を理解し、自分の言葉で意思を示せるのであれば有効です。しかし、認知症やせん妄(入院中に一時的に意識が混乱する症状)が見られる場合、後々「その遺言は無効だ」と家族から争われる可能性があります。

例えば、90歳の男性が入院中に遺言を作成したケースでは、後から「当時は判断能力がなかったのではないか」と子どもたちが訴え、裁判で争いになった例もあります。最終的には医師の診断書が証拠となり有効と判断されましたが、診断書がなければ無効になっていた可能性もあるのです。

医師の診断書が必要になる場面とその意味

入院中に遺言を作成する場合、体調や病状によっては「判断能力が疑われる」と公証人が判断することがあります。その場合、そもそも公正証書遺言は作成できない場合があります。仮に判断能力がある場合にも、医師に「遺言を作成する能力がある」という診断書を書いてもらう必要があります。

診断書は、次のような役割を果たします。

  • 公証人が安心して作業を進められる
  • 家族が後で不信感を持たずに済む
  • 裁判になった際の証拠として有効

特に終末期医療を受けている方や、高齢で体力が衰えている方は診断書を準備しておくのが安心です。

家族や相続人とのトラブルを避ける工夫

入院中に遺言を作ると、家族にとって「急に作った」という印象を与えかねません。その結果、内容が一部の相続人に不利だった場合、「無理やり作らされたのではないか」と疑われることがあります。

これを避けるためには、例えば、

  • 事前に、信頼できる家族へ遺言を作る意思を伝えておく
  • 専門家(日本相続知財センター札幌等)に立ち会ってもらう
  • 診断書を添えて記録を残す

 といった対策が有効です。

よくある失敗例と回避策

  • 失敗例1:書類不備で公証人が当日作成できなかった

    → 専門家に依頼し、事前に書類を揃える

  • 失敗例2:判断能力が疑われ、後に遺言が無効と主張された

    → 医師の診断書を必ず添える

入院中だからこそ早めに準備したいケース

  • 余命宣告を受けた場合
  • 認知症が進行している場合
  • 重い病気で今後の意思表示が難しくなる見込みがある場合

入院生活は予測がつかないことも多く、体調の急変で遺言作成が間に合わないケースもあります。「もう少し元気になってから」と先送りせず、判断能力がしっかりしているうちに準備するのが大切です。

専門家の役割とサポート体制

日本相続知財センター札幌の役割と相談メリット

日本相続知財センター札幌では、入院中の遺言作成に関してトータルでサポートしています。具体的には、

  • 公証人との原案のやりとり、日程調整
  • 必要書類のリストアップと収集サポート
  • 遺言内容の整理や分配方法のヒアリング
  • 税理士との連携での相続税対策

などを一貫して行います。特に入院中の本人や家族は時間的・精神的余裕がなく、手続きを自分で進めるのは困難です。センターの支援を受けることで、病室から一歩も出なくても遺言作成を進められる安心感があります。

医師や病院との連携が必要になる場合

入院中の遺言作成では、医療機関との調整が不可欠です。例えば、

  • 公証人や証人が病室に入るための病院側の許可
  • 本人の体調に合わせた面談時間の設定
  • 医師の診断書の発行依頼

といった調整を行う必要があります。
こうした調整は家族だけでは難しいこともあり、専門家が仲介に入ることでスムーズに進みます。実際に、病院によっては「遺言作成のために医師が立ち会う」ことを求められる場合もあり、専門家の存在が欠かせません。

よくある質問(Q&A)

  • 声を出せない場合でも、字を書くことで意思表示ができれば遺言作成は可能です。ただし、全く意思を示せない場合は難しくなります。そのため、早めの行動が大切です。

  • 自筆証書遺言は費用がかからず簡単に作れますが、形式不備で無効になるリスクがあります。一方、公正証書遺言は費用がかかる代わりに、裁判所の検認も不要で、法的に最も確実です。入院中のように状況が限られているときは、公正証書遺言が適しています。

  • 財産額によって異なりますが、公証人の手数料と出張費用、専門家への依頼料を含め、数十万円程度が目安です。相続財産が大きい場合はさらに高額になることもあります。

  • 本人が動けない事情が明確であれば、病院に出張してくれます。ただし、公証人も予定があるため、事前の調整が不可欠です。余裕を持って依頼することをおすすめします。

  • 相続の実務に精通し、病院や公証人との調整経験が豊富な専門家を選ぶことが大切です。地域密着型で信頼性の高い機関(例:日本相続知財センター札幌)であれば、安心して任せられます。

この記事の監修者

一般社団法人 一般社団法人日本相続知財センター札幌 常務理事 成田 幹

一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹

2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。

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