相続税申告は自分でできる?検討中の方へメリット・デメリットや手続の流れを解説
相続税申告を自分で行うか検討中の方に向けたガイドです。このページでは、相続税申告の基礎知識から手続きの手順、専門家の役割までを詳しく解説します。初めての相続税申告で何から始めればいいのかわからない方も、まずはこの記事を読んで自分でできるかどうかを検討してみてください。
相続税申告を自分で行うメリット・デメリット
メリット:費用を節約できる
相続税申告を自分で行う最大のメリットは、専門家に依頼する費用を抑えられることです。税理士に申告を依頼する場合、数十万円以上の報酬が必要になるケースが一般的です。一方、自分で申告すれば、その費用を節約できます。ただし、後述するリスクも踏まえて慎重に判断することが重要です。
デメリット:手続きの難しさとリスク
一方で、自分で申告することには難しさも伴います。相続税の計算は複雑であり、税法やルールを正確に理解しなければなりません。計算ミスや記入漏れがあれば、税務署から修正を求められたり、場合によっては追加の税金が課されることもあります。
たとえば、土地や建物の評価額を間違えると、本来納めるべき税額より多く支払う可能性があります。こうしたミスを防ぐためには、申告前の準備と慎重な確認が必要です。
どんな人に向いているのか?
相続税申告を自分で行うのに向いているのは、以下のような方です。
- 相続人が一人であり、相続財産が少額であること。
- 相続財産が金銭のみ
- 過去に税金関連の手続きを経験したことがある
一方、複数の不動産や株式など複雑な財産を相続した場合は、税理士に依頼するほうが無難です。
相続税申告を自分で行うための基礎知識
相続税申告が必要なケースとは?
相続税申告が必要かどうかを判断するには、まず「基礎控除額」を理解しましょう。基礎控除額とは、相続財産のうち課税対象外となる金額のことです。
計算式:3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
たとえば、法定相続人が3人いる場合、基礎控除額は4800万円となります。この金額を超える財産がある場合、相続税申告が必要です。
相続税の計算方法をわかりやすく解説
相続税の計算は以下の流れで進めます:
- 相続財産の総額を計算
- 各相続人の取得割合をもとに課税価格を計算
- 税率を適用して税額を算出
具体例を挙げると、財産が6000万円、相続人が2人いる場合、基礎控除額は4200万円(3000万円 + 600万円 × 2人)。課税対象となる財産は6000万円 – 4200万円 = 1800万円です。この金額に応じた税率で相続税を計算します。
必要書類一覧と準備のポイント
相続税申告には、代表的な例として、以下の書類が必要です:
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 財産目録(不動産登記簿謄本や預金通帳のコピーなど)
- 固定資産税評価証明書
書類を揃える際には、漏れがないようチェックリストを活用することをおすすめします。
戸籍謄本の取り方については、「【便利】戸籍謄本の取得方法と広域交付制度」にてわかりやすく説明しておりますのでご参照ください。
税務署の役割と申告期限の重要性
税務署は、申告に関する相談窓口や必要書類の提供など、さまざまなサポートを行っています。申告期限は「被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内」と定められており、これを過ぎると延滞税や加算税が発生するため、期限内に手続きを済ませることが重要です。
相続税申告を自分で進める具体的な手順
申告に必要な情報の収集方法
申告を始める際には、まず相続財産の全体像を把握することが重要です。以下の手順で情報を集めましょう:
- 銀行口座の残高証明書を取得する
- 不動産の評価額を確認するために固定資産税評価証明書を用意
- 株式や投資信託の評価額を証券会社に問い合わせる
これらの情報を整理した「財産目録」を作成することで、申告準備がスムーズに進みます。
申告書の作成と提出方法
相続税申告書は税務署の窓口で配布されているほか、国税庁のウェブサイトからダウンロード可能です。記入にあたっては以下のポイントに注意してください:
- 財産の種類ごとに金額を正確に記載
- 各相続人の取得割合を明確に記入
提出方法は、直接税務署に持参するか郵送する方法があります。提出後に控えを受け取ることを忘れないようにしましょう。
税務署や関係機関での手続きの流れ
申告後、税務署から内容に関する確認や追加資料の提出依頼がある場合があります。速やかに対応することで、手続きの遅延を防ぐことができます。また、必要に応じて税務署の相談窓口を活用するのも有効です。
よくある失敗とその対策
以下は、初心者が陥りやすい失敗例とその対策です:
- 財産の漏れ:すべての財産を把握するため、専門家に確認を依頼する
- 期限内に申告できない:早めの準備を心がけ、期限をカレンダーに記載
- 計算ミス:国税庁の提供する計算ツールを活用し、ダブルチェックを行う
これらを意識して取り組むことで、スムーズな申告が実現します。
専門家の役割
自分で相続税申告ができるかどうかの判断の材料として、各専門家の役割もみてみましょう。
税理士の役割
相続税申告は複雑で、専門知識が必要です。税理士は法律や税制に精通しており、次のようなサポートを提供します:
- 相続財産の評価:土地や建物などの評価は専門的な計算が必要です。税理士は適正な評価を行い、税務署から指摘されるリスクを軽減します。
- 申告書の作成と提出:必要書類を揃え、正確な申告書を作成します。複雑な手続きがスムーズに進みます。
- 節税対策のアドバイス:控除や特例を適用することで、税負担を軽減する方法を提案します。
具体例として、農地を相続した場合、”納税猶予の特例”を適用する際の手続きも税理士が行います。これにより、納税額を大幅に減らせる可能性があります。
日本相続知財センター札幌の役割
日本相続知財センター札幌では、相続全般に関するコンサルティングサービスを提供しています。以下の特徴があります:
- 無料相談の実施:初回相談は無料のため、初めての方でも気軽に利用可能です。
- 専門家チームによる対応:グループに税理士が在籍し、専門的な観点から最適なアドバイスを行います。
- サポート内容の多様性:遺言書作成から相続税申告まで幅広いサービスを提供します。
例えば、経験豊富なスタッフと専門家である税理士との連携により、相続税申告を自分でやれるかどうかを判断することも可能です。
相談サービスや無料ツールの活用法
相続税申告を自分で行う際には、無料相談やオンラインツールを活用することも可能です。
- オンライン計算ツール:相続税の概算を計算できるツールがあります。これにより、大まかな税額を把握できます。
- 自治体の相談窓口:各自治体では、相続に関する無料相談を実施している場合があります。経験豊富な専門家に相談できます。
- 書籍やセミナー:入門書やセミナーで、相続税の基礎知識を学べます。
具体例として、インターネットで検索すると無料でダウンロードできる相続税計算シートが見つかります。これを活用することで、効率的に準備を進められます。
よくある質問(Q&A)
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結論から言えば、可能です。ただし、次のような点に注意が必要です。
・手続きの流れを理解する:相続税申告の期限や必要書類を把握しましょう。
・情報収集の時間を確保する:税制や控除のルールを学ぶ必要があります。
・無料ツールや専門家を適宜活用する:適切なサポートを受けることで、ミスを防げます。 -
個人差はありますが、ゼロから始めても数ヶ月程度かかる可能性があります。また、財産が多い場合や特殊な控除を利用する場合は、さらに時間がかかることがあります。
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以下が主な入手先です。
・戸籍謄本や住民票:市区町村役場
・固定資産評価証明書:市区町村税務課
・預貯金の残高証明書:各金融機関これらの書類は、正確な相続財産の把握と申告に欠かせません。
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税務署からの指摘に関しては、
・通知内容を確認する:具体的な指摘事項を把握します。
・専門家に相談する:指摘内容に応じて、税理士や弁護士に相談するのが最善です。
・訂正申告を行う:ミスがあれば速やかに訂正します。例えば、土地の評価に誤りがあった場合、正しい評価額を再計算し、修正申告を行う必要があります。
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費用は依頼内容や地域によって異なりますが、以下が一般的な目安です。
・税理士の報酬:総財産の0.5%~1%
この記事の監修者
税理士法人 中野会計事務所
税理士 湯山 啓太
大学卒業後、複数の会計事務所において法人税業務に加え、個人および法人の相続・贈与・事業承継などの資産税業務の担当として勤務したのち、2019年10月より税理士法人中野会計事務所に所属。千葉県税理士会 所属、登録番号118096。相続税申告を数多く手掛け、個人から法人まで税務についての幅広いサービスを提供している。