LINE連載 「困った相続人」アーカイブ(#11〜最終回)

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各エピソードの概要と共に、相続に関するトラブルやその解決策を学ぶことができます。気になるエピソードをチェックし、ぜひLINEでの連載配信にもご登録ください!

虎震(トラブル)家の困った相続人⑪~和解と新たな問題

一郎、二郎、花子の三人は、一郎の懺悔を受けて冷静に話し合いを進めました。
一郎の正直な告白と謝罪により、二郎と花子は複雑な感情を抱きましたが、家族の絆を取り戻すために協力することを決意しました。

「分かったよ、兄さん。お父さんの遺産をどうするか、みんなで考えよう」と二郎は真剣な表情で言いました。 

一郎は、自分の提案を慎重に話しました。

「土地や建物は自分が相続したい。でも、お金については二郎と花子に相続してもらいたいんだ。そして、使い込んでしまったお金も、少しずつ返していくつもりだ」 

二郎は一瞬考え込みましたが、すぐに「それでいいと思う。
兄さんが正直に話してくれたから、信じるよ」と応じました。

花子も「うん、それが一番いい解決策だと思うわ」と同意しました。 

そして、三人は、亡き祖父名義の土地についても話し合いました。

その土地は父の自宅の土地の半分を占めており、一郎がその土地を相続したいと希望しました。そして、二郎と花子は、一郎の希望を尊重し、土地の相続についても同意しました。

話し合いが終わった後、三人は清六おじさんに進展を報告しました。
電話越しに一郎が状況を説明すると、清六は静かに聞いていました。
しかし、清六の返答には新たな懸念が含まれていました。 

「お前たちが仲直りできてよかった。だが、ひとつ気になることがある」と清六は言いました。 

「ゆき子の認知症が進み始めているらしいんだ。」

 ゆき子は、三人の父の妹であり、兄弟にとっては叔母にあたります。

清六は続けて「司法書士から聞いた話なんだが、遺産分けの話し合いには意思能力が必要だそうだ。遺産をもらうとか、要らないとか理解することだ。 もし認知症がさらに進んで意思能力が低下すると、ゆき子は単独では話し合いができなくなり、後見人っていう人を付ける必要があるらしい。」

これを聞いた三人は、ゆき子おばさんの状態に急を要することを理解しました。
三人にまたしても難題が降りかかったようです。 

果たして、祖父名義の土地の遺産分割協議はうまくいくのでしょうか? 

虎震(トラブル)家の困った相続人⑫~ゆき子おばさんの判断能力を確かめる

清六おじさんからの電話を受けた後、一郎、二郎、花子は後日ゆき子おばさんの家へ向かいました。
車中で、三人は事前に相続センターからもらったアドバイスについて話し合いました。 

「相続センターが教えてくれた通り、判断能力を確認するための質問は、名前や生年月日、今日の日付などの基本的な質問から始めて、次に遺産分割の具体的な内容について聞いてみよう」と二郎が言い、皆で同意しました。

 家に到着すると、ゆき子おばさんは温かく三人を迎えてくれました。
三人はリビングに座り、ゆき子おばさんとの会話を始めました。 

「おばさん、今回は色々迷惑かけてごめんね。今日も実は、専門家の先生から相続人の方々がご高齢なので、皆さんがちゃんとお名前や生年月日など言えるか確認して、と言われてるんだ。協力してくれるかな?」と一郎が言いました。 

「もちろんよ。あなたたちが来るのを楽しみにしていたわ」とゆき子は笑顔で答えました。 

二郎が「では、お名前と生年月日を教えてもらえますか?」と聞きました。

「私は加賀美(かがみ)ゆき子、昭和16年10月29日生まれよ」と彼女は自信を持って答えました。 

一郎は続けて、「おばさん、今日は何日か分かりますか?」と尋ねました。

 ゆき子は少し考えた後、「ええ、今日は8月7日ね」と正確に答えました。

 最後に花子が「今回の遺産分けについてご理解いただいてますか?」と聞きました。

 「ええ、亡くなった父の遺産について話し合うことになっているわね。父の土地の相続を進めることに関しては問題ないし、実家の土地なんだから一郎が引継けばいいじゃない」とゆき子は答えました。

 ゆき子おばさんは、基本的な情報だけでなく、今回の遺産分割の話題についても正確に理解しており、どうやら遺産分割協議はできそうです。

 三人は安心しながらも、ゆき子おばさんの体調や精神状態について注意深く見守る必要があることを再確認しました。 

まず、第一関門突破! しかし更なる難問が彼らを待っている?

虎震(トラブル)家の困った相続人⑬~代襲相続人との再会

ゆき子おばさんの判断能力を確認し、遺産分割協議を進める準備が整ったと思われた一郎、二郎、花子。
しかし、さらに解決せねばならない問題がありました。 

彼らの父の弟、すでに故人となっている吾郎おじさんに、一人息子、つまり一郎たちのいとこの高橋明(たかはしあきら)がいました。
 吾郎が亡くなっている以上、明が代襲相続人として遺産分割協議に参加する必要があったのです。

「吾郎おじさんが亡くなってから、明君と連絡を取ったことがないんだよな…」と一郎が言いました。

二郎と花子も顔をしかめました。
数十年も音信不通のいとこである明に突然連絡を取って、遺産分割の話を持ちかけるのは、簡単なことではありません。

 「でも、彼にも代襲相続人としての権利がある以上、避けて通れないよね」と花子がため息をつきながら言いました。 

「まずは、彼の連絡先を調べるところから始めないと」と二郎が冷静に言いました。

「ただ、久しぶりの連絡で、いきなり遺産分割の話をするのもどうかと思うんだ。まずは、近況を確認し合うところから始めた方が良さそうだな」と一郎が提案しました。

 「その上で、ゆっくりと今回の事情を説明して、協力を仰ぐのがベターね」と花子も同意しました。

 翌日、三人はまず家族アルバムや昔の手紙、電話帳を調べ、明の連絡先を探しました。
幸い、ゆき子おばさんの古い手紙の中に、明の住所と電話番号が見つかりました。

 「これで連絡は取れる。でも、どうやって話を切り出すかが問題だ」と二郎が言いました。 

「まずは電話で軽く挨拶してから、会う約束を取り付けよう」と一郎が提案しました。

 果たして一郎は電話でうまく話すことができるのでしょうか?

虎震(トラブル)家の困った相続人⑭~久々の会話

一郎は手に汗を握りながら、電話機を見つめていました。
高橋明に連絡を取るのは何年ぶりだろうか。
なんどか深呼吸をして、ついに電話番号をダイヤルしました。

 「プルルル…プルルル…」

数回の呼び出し音の後、低く落ち着いた声が電話の向こうから聞こえてきました。

 「はい、高橋です。」 

「明君、お久しぶり。虎震一郎だよ。」

一郎はできるだけ落ち着いた声で話しかけました。
 一瞬の沈黙の後、明が答えました。

「一郎さん…?本当に久しぶりですね。一体どうしたんですか?」

 「実はね…」

一郎は軽く言葉を詰まらせながらも、すぐに続けました。

「おじいちゃん名義の土地があって、まだ実は相続手続がおわっていないんだ。久しぶりに会って、色々と話したいんだけど、時間を取ってもらえないかな?」

 明は少し考え込んでいるようでしたが、

「そうですね、久しぶりですし、話を聞いてみたいと思います。いつ会いましょうか?」

と、意外にも前向きな返答が返ってきました。 

「ありがとう!じゃあ、今週末にでもどうかな?」と一郎が提案すると、明もそれを快諾しました

無事会う約束を取り付けた虎震家のきょうだい。無事、明の承諾を得られることができるのでしょうか?

▼ここで実務的な観点でのお話
久しぶりに会う親族に対して相続の打診や相談をする際には注意が必要です。
初回の接触時の印象が最後まで残ることが多く、丁寧に、かつ物腰を柔らかく説明をするとよいでしょう。
 高圧的に出たり、あまりに事務的に説明することはいけません。
相手の心証を悪くするだけで失敗のもとです。相手がどんな人がわからない以上、慎重に対応する必要があります。

虎震(トラブル)家の困った相続人⑮~久々の再会

週末が訪れ、一郎は心なしかソワソワしながら、待ち合わせ場所に向かっていました。
彼が選んだ場所は、かつて小さな明を連れて、よく訪れていた喫茶店。
店内は昔と変わらず、温かみのある木のインテリアと心地よいジャズが流れていました。 

「ここでいいかな…」と席を見つけ、少し早めに到着した一郎は、周りの客たちを見渡しながら、懐かしい思い出に浸っていました。

 すると、ドアが開き、一郎が視線を上げると、そこに明が立っていました。
以前よりも少し大人びた表情で、しかしどこか昔と変わらぬ優しい笑顔がありました。 

「明君!」

と手を挙げて合図すると、明も微笑みながらテーブルに向かってきました。

 「久しぶりですね、一郎さん」と挨拶を交わし、二人はテーブルに向かい合って座りました。

最初は緊張が漂っていましたが、久々の再会に話が弾むと、次第に打ち解けていきました。 
しばらく雑談を続けた後、一郎は少し真剣な表情に変わり、

「実は…」

と話を切り出しました。

「おじいちゃんの土地の件で、君の協力が必要なんだ。」

明は少し眉をひそめながらも、黙って一郎の話を聞いていました。

 「おじいちゃんの相続手続きがずっと滞っていて…それを整理するために、君の力が必要なんだ。もちろん、無理は言わないけど…どうかな?」

 明は一瞬考え込みましたが、やがてゆっくりと頷きました。

「わかりました。一郎さん、僕で良ければ協力します。おじいちゃんの土地のこと、きちんと整理しましょう」

 一郎は胸を撫で下ろし、笑顔を浮かべました。

「ありがとう、明君。本当に助かるよ」 

こうして、二人は再び協力し合うことを約束し、新たな一歩を踏み出すこととなりました。再会の不安は杞憂に終わり、むしろかつての友情が再び芽生えた瞬間でした。

▼ここで実務的な観点でのお話
今回、明は意外なほど素直に快諾してくれました。
このような場合でも、一郎のようなお願いする立場の人から、「お礼」や「印鑑代」ということで数万円~を渡すケースがあるようです。
あくまで「お礼の気持ち」の表現なので、対価としてではありませんが、効果的な場合もあるようです。

虎震(トラブル)家の困った相続人⑯(最終回)~和解と新たな悩み

一郎と明、マタギの清六叔父さん、認知症と危ぶまれたゆき子叔母さんの協力も得て、虎震家に残された祖父の土地の相続手続きは、驚くほどスムーズに進みました。

 今まで疎遠だった人々もそれぞれ連絡をとり、旧交を温める良い機会となりました。
そして、一郎、二郎、花子のきょうだいが一堂に会し、最後の遺産分割協議が行われたとき、部屋の空気にはどこか落ち着きが感じられました。

お互いに顔を見合わせ、少しの沈黙の後、笑顔を交わしました。お父さんの遺産も、おじいちゃんの土地も、無事に分配され、長らく続いていた争いは、ようやく終わりを告げたのです。 

「これで…本当に終わったんだな」と、一郎は安堵の息をつきました。

二郎も、花子も、それぞれに感じるところがあったようで、ただ静かに頷いていました。 
しかし、この瞬間が一族にとっての新たな始まりであることに、彼らはまだ気づいていませんでした。

 確かに、遺産分割は無事に終わり、きょうだいたちは和解しました。
だが、それぞれの胸には、新たな悩みが渦巻いていたのです。
次回から新たに「虎震(トラブル)家の悩める人々~生前対策編」がスタートします。

 経営者であり離婚歴のある一郎、子供のいない二郎、独身の花子、生涯独身の清六おじさん、資産家のゆき子叔母さん…。 
虎震家の人々がそれぞれの人生の岐路に立たされます。
果たして彼らは、自分たちの未来を守るために、どのような選択をするのでしょうか。


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