【必見!】相続人が認知症の場合の必要な手続きと事前対策
相続手続きを進める際に、相続人の中に認知症の方がいる場合、通常の手続きとは異なる対策が必要です。この記事では、認知症の相続人がいる場合の相続手続きのポイントと具体的な対策について解説します。
目次
認知症の相続人がいる場合の基本的な問題点
認知症の相続人がいると、遺産分割協議はできない
相続が発生すると、亡くなった方の財産、例えば銀行預金の引き出しや不動産の名義変更ができなくなるため、遺産分割協議で「誰が相続するか」を確定させる必要があります。この遺産分割協議に参加するためには判断能力および意思表示する能力が必要です。
しかし、例えば、相続人であるお母さんが認知症で判断能力が低下していると、遺産分割協議に参加できず、意思表示ができません。そのため、遺産の分配の手続きができず、お父さんの口座からお金を下ろせない、不動産の名義変更ができないことになってしまいます。
そして、認知症になった相続人がいるからといって、遺産分割協議書などへの署名をほかの相続人が代筆することはできません。
そこで、お母さんに、成年後見人をつける必要が出てくるのです。
成年後見制度の利用
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人を保護し、サポートするための制度です。この制度では、家庭裁判所が選任した成年後見人が、認知症の相続人に代わって財産管理や法律行為を行います。これにより、相続手続きも円滑に進めることが可能です。
お父さんの死後、遺産分割協議を進めるために、お母さんの後見人の選任を家庭裁判所に申し立てた場合、手続きには1〜3カ月ほどかかります。相続税申告の期限は10カ月ですので、なるべく早く申立てをしたほうがいいでしょう。
成年後見制度の課題
ただし、この成年後見制度にはいくつか課題があり、必ずしも相続人の利益になる制度とはいえない側面があります。
親族以外が後見人に選ばれる可能性が高い
成年後見人の決定権は家庭裁判所にあります。最近の傾向では、親族以外の専門家(弁護士や司法書士など)が後見人に選ばれる割合が増えており、誰が後見人に選ばれるかは申立てをしてみないと分かりません。
後見人には報酬が発生する
成年後見制度を利用する際のもう一つの課題は、専門家が後見人になると報酬が発生することです。報酬の目安は月2万円から5万円程度であり、認知症の相続人が亡くなるまで継続します。このため、費用面でも負担が大きくなることを考慮する必要があります。
他の相続人の利益になるとは限らない
後見人をつけることで遺産分割協議が可能になりますが、必ずしも他の相続人の利益になるとは限りません。後見人の使命は「お母さんの財産を守ること」であり、法定相続分を守ることが求められます。例えば、「お母さんは既に十分な財産を持っているから子供が多く相続したい」という希望があっても、後見人が認めるのは難しいでしょう。
相続人に認知症の人がいる場合の事前対策
上記のように、相続人の1人が認知症で判断能力がない場合、そのまま遺産分割協議を行うことはできません。特に、お父さんの相続でお母さんが認知症の場合、このようなケースは増えると考えられます。相続発生後のトラブルを避けるために、お父さんが生前にできる対策を解説します。
遺言書の作成
まず、対策の一つとして、お父さんが生前に遺言書を作成することが有効です。遺言書で「誰に何を相続させるか」を明確にしておくことで、遺産分割協議を経ずに預貯金の解約手続きや不動産の名義変更を行い、スムーズに相続手続きを進めることができます。
家族信託の活用
家族信託は、信頼できる家族に財産を預けて管理・運用してもらう制度です。認知症の相続人がいても、事前に信託契約を結ぶことで、財産管理が確実に行われ、相続手続きがスムーズに進められます。たとえば、お父さんが長男へ家族信託を利用して不動産や金銭を信託することにより、相続が発生した際に認知症の相続人がいても、その財産は遺産分割協議の対象からは外れ、財産の分配が迅速に行われます。
専門家の役割
日本相続知財センター札幌の役割
相続人に認知症の人がいる場合、成年後見制度の申立てなどがあるため、弁護士などの専門家の助けが必要です。日本相続知財センター札幌では、適切な専門家に繋ぐことで、相談者の手続をスムーズに進めるお手伝いを致します。
よくある質問(Q&A)
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成年後見制度を利用し、成年後見人を選任することで、認知症の相続人に代わって遺産分割協議を進めることができます。
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信頼できる人を選ぶことが最も重要です。また、家庭裁判所に対して、適切な候補者を推薦することも必要です。
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遺言書がない場合は、遺産分割協議を行いますが、認知症で判断能力が低下している場合は、協議を行うことができません。この場合は、成年後見制度の利用が必要です。