独身の方必見!相続を失敗しないための相続・相続対策ガイド
独身で暮らしている人が増える中、「もし自分に万一のことがあったら?」と不安を抱える方は少なくありません。遺産分割や手続きを想像したときに、「まだ自分は若いし関係ない」と思ってしまうこともあるでしょう。ところが、独身だからこそ相続の問題が発生すると親族間で混乱が生じやすく、誰が動くのか、どのように遺産を分けるのかといった課題が明確になっていないケースが多いです。ここでは独身の方や、独身の親族を持つ方が知っておきたい相続の基本や生前対策、専門家のサポートまでをわかりやすく解説していきます。
目次
独身の方の相続の基礎を知る
独身の方の遺産分割はどうなるのか
独身の方が亡くなった場合、結婚している人と異なり、配偶者による相続は起こりません。そのため、遺産を受け取る優先順位は「子ども→両親→兄弟姉妹」といった順番になります。子どもがいない場合は、親が相続人となります。親もすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人です。独身だと配偶者がいないぶん、誰が話し合いの主体になるか決まりにくく、親族間で手続きの方法が分からず戸惑うことが多々あります。
例えば、生涯を独身で過ごし、遠方に暮らしていた兄が亡くなったとしましょう。残された遺産に関して、弟や妹はそもそもどのような手続きが必要なのか、どの役所に行けばいいのか、戸籍謄本をどこまで取り寄せるのか不安を感じます。相続人の確定や相続財産の調査など、独身の場合でも基本的な相続手続きは必要です。しかし近年は「生涯未婚率」が上昇しており、一人暮らしの方ほど生前のうちから対策をしていないことが多いです。そうした背景もあり、独身者の相続問題が一段と注目されています。
法定相続人の範囲と相続順位
民法で定められた相続順位は、
1. 子ども(第一順位)
2. 親(第二順位)
3. 兄弟姉妹(第三順位)
という順番です。独身で子どもがいない場合、親が相続人になり、さらに親がすでに他界しているなら兄弟姉妹へと移ります。最近では、高齢の独身者が亡くなるケースが増え、既に両親も他界しており、最終的に兄弟姉妹や甥姪まで手続きを行うことがあるので注意が必要です。
相続人が多岐にわたり、また遠くに住んでいると手続きがスムーズに進まないことも少なくありません。どのように連絡を取り合うのか、戸籍を遡って調査するときにどの範囲まで洗い出すのか、専門家の助けを借りながら整理するのが近道です。
相続順位については、「【基礎から学ぶ】遺産相続の順位と法定相続分~遺言書の重要性」にて詳しく解説していますのでご参照ください。
独身ならではの相続リスクとは
独身の方が相続について準備をしていない場合、大きなリスクは「相続手続きが誰にも引き継がれない」ことです。例えば、銀行口座や不動産の名義変更、生命保険の請求などは、名義人本人が亡くなれば手続きを開始しなければなりません。しかし独身で近しい家族がいない状態だと、どのように進めるべきか誰もわからず、放置されることもあります。
また、親族間で協力体制ができていれば良いですが、疎遠だと「誰がどこまで相続を受ける権利があるのか」が把握されないまま事が運び、遺産の分配で深刻なトラブルに発展するケースもあります。こうした事態を避けるためにも、生前のうちから財産の把握や遺言書の作成が重要です。
独身の方が陥りやすい相続トラブル
遺言書がない場合の問題点
独身者にとって特に大切なのが遺言書です。なぜなら、法定相続人の優先順位に従うだけでは意図しない人に財産が渡る可能性があるからです。もし自分が大切にしている不動産や預貯金を特定の親族や友人、あるいは公益法人に遺したい(遺贈寄付)と考えるなら、遺言書によって明記しなければその通りにならない可能性があります。
実際、「自分が介護などでお世話になった姪に財産を渡したい」「お墓の管理をしてくれた親族に感謝の気持ちを形にしたい」などの思いがあっても、生前にきちんと書類を準備しないと希望が叶わないケースがよくあります。遺言書がないと、基本的には法定相続人で均等に分割したり、話し合いによって分配割合を決めることになります。しかし、その過程で意見が対立すると長期間のトラブルへ発展する恐れがあります。
遺留分の請求とトラブル事例
遺言書を作成していても、兄弟姉妹に対しては遺留分請求権(※)はありません。しかし、両親が相続人の場合には遺留分が発生することがあります。独身であっても、親が生存している場合には注意が必要です。
例えば、すべての財産を兄弟に残す旨を遺言書で書いた場合でも、親が遺留分を請求してくると、兄弟側も対応を検討しなければなりません。こうした点を踏まえたうえで、事前に親族間で話し合っておくこと、専門家へ相談することが大切です。
※遺留分は、一定の相続人に法律で保障された相続の取り分です。配偶者・子ども・直系尊属(親など)に与えられます。兄弟姉妹にはありません。
遠方の親族への連絡と手続きの負担
独身者が亡くなったとき、親族がどこに住んでいるのか把握できていないケースもあります。疎遠なまま数十年が経過していると、連絡先がわからず役所で戸籍を取得しながら1人ずつ確認していかなければいけません。場合によっては、戸籍を取り寄せたら「すでに亡くなっていて、その相続人がさらに存在する」という複雑な状況に陥ることもあります。
手続きには多くの書類や時間が必要です。特に不動産が絡むと、名義変更手続きのために法務局へ申請しなければならず、相続人全員の同意が欠かせません。遠方の親族と郵送や電話、オンラインでやり取りをする手間が大きく、円滑に進まずに揉めるリスクが生まれます。
相続放棄や限定承認の選択
独身者でも借金を抱えていたり、ローンなどの負債を残しているケースがあります。その場合、相続の放棄や限定承認(財産と負債を差し引いてマイナスなら責任を負わない制度)を検討することが大切です。しかし、こうした手続きは原則として3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければならず、過ぎると単純承認(負債も含めて相続する)とみなされます。すぐに行動しないと想定外の返済義務が発生するため、相続人の立場となる人は早めに状況を把握して動く必要があります。
独身の生前対策と財産管理のポイント
遺言書の種類と作成の流れ
遺言書は主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。独身の方におすすめなのは、公証人が関与して内容や形式をしっかり確認してくれる「公正証書遺言」です。公証役場で作成し、公証人が原本を保管するので、紛失や改ざんのリスクが低いというメリットがあります。
作成するときは、財産目録や戸籍関係など事前準備が必要です。誰にどの財産を渡したいのかを明文化し、後から誤解が生じないようにするのがポイントです。公正証書遺言は証人2名が立ち会い、内容を確認しながら作成します。費用面は財産額によって異なりますが、近年では遺言がトラブルを防ぐ大きな要素といわれています。
遺言書の種類については、「遺言書の種類別に見るメリットとデメリット。最適な遺言書を選ぼう!」、公正証書遺言については「公正証書遺言とは?メリット・作成手順を解説」でわかりやすく説明していますので、ご参照ください。
任意後見制度や死後事務委任の活用法
独身で高齢になってくると、認知症などで判断能力が低下する恐れもあります。そのときに生前の財産管理や医療方針をどう決めるか、身の回りの手続きを誰が行うのかが懸念されます。そこで注目されているのが「任意後見制度」です。これは、元気なうちに自分が信頼する人(または専門家)と契約を結び、自分の判断力が落ちたときに代理で財産管理や各種手続きをしてもらう仕組みです。
さらに、死後の手続き(銀行口座の解約、遺品整理、葬儀の段取りなど)は「死後事務委任」で定めておくと安心です。後見制度と併せて契約しておく方が増えています。たとえば「自分の葬儀は家族葬にしてほしい」「お墓は都内の永代供養墓に納めてほしい」などの希望がある場合も、死後事務委任契約で具体的に取り決めが可能です。
死後事務委任については、「死後事務委任契約とは?内容・手続き・費用を徹底解説!」にて詳しく解説していますのでご参照ください。
相続税対策や生前贈与の注意点
独身であっても財産が多いと相続税が課される可能性があります。特に都心部に不動産を所有していたり、長年貯金を積み重ねていた場合は、法定基礎控除を超える財産になることも珍しくありません。相続税の基礎控除は、2025年時点で「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」とされており、独身者の法定相続人が両親や兄弟の場合でも、合計額が小さいとは限りません。
生前贈与や生命保険の非課税枠などを上手に活用しようとする動きがありますが、贈与税との兼ね合いを理解しておく必要があります。例えば、年間110万円までは基礎控除で贈与税がかからないため、複数年に分散して贈与を行い、将来的な相続税の負担を軽減しようとする方もいます。ただし安易に行うと、受贈者(受け取る側)の贈与税申告が必要な場合があり、煩雑になることもあるので注意が必要です。
生命保険などの活用とメリット
独身者の相続対策として生命保険を活用する例も少なくありません。生命保険金は「受取人固有の財産」として扱われるため、原則として相続財産に含まれません。したがって、遺産分割協議の対象にはならず、受取人が確実にその保険金を手にできる点が大きなメリットです。
自分の葬儀費用や負債の清算に充てるための死亡保険金を用意しておけば、残された人の経済的負担が軽減されます。受取人を指定できるので、兄弟姉妹や親に確実に資金を渡したい場合などに役立ちます。ただし、保険金の金額や保険料の負担など、全体のバランスを考慮しながら契約する必要があります。
専門家の役割と日本相続知財センター札幌のサポート
弁護士・税理士ができるサポート範囲
相続にまつわる手続きやトラブルを防ぐためには、弁護士や税理士など専門家の力が欠かせません。たとえば、弁護士に依頼すれば遺産分割協議の代理人として交渉をしてくれたり、遺言書作成のアドバイスを受けたりでき、万一のトラブルを早期に解決する見通しが立ちやすくなります。税理士は相続税申告が必要なケースで、財産評価や申告書の作成などをスムーズに行うためのアドバイスを提供します。
独身の方の場合、相続人が誰になるのか複雑になりがちです。戸籍調査の必要性や、遠方の親族へ声をかけるタイミング、相続放棄すべきかどうかの判断など、きめ細やかなサポートが得られるのは心強い点です。
日本相続知財センター札幌の特徴と強み
相続の専門家として注目されている機関の一つに、「日本相続知財センター札幌」があります。ここは相続や資産承継に特化した知識と経験を持ち、各分野のプロフェッショナルと連携しながら総合的な解決策を提案しています。独身の方向けにも手厚いサポートがあり、遺言書作成や生前贈与の進め方、任意後見制度や死後事務委任など多岐にわたる相談が可能です。
札幌だけでなく全国規模のネットワークを活かして対応しているため、遠方の親族や複雑な相続人調査にも柔軟に対応できる点が特徴です。「何をどう相談していいかわからない」という段階でも相談しやすく、一人ひとりの状況にあわせたプランを提案してくれます。
遺言書作成・手続き支援の具体例
例えば「遠方の親に財産を遺したいが、手続きが不安」という独身の方の場合、まずは財産目録を整理し、遺言書の形態を検討します。公正証書遺言が良いのか、自筆証書遺言が良いのか、その違いやメリット・デメリットを日本相続知財センター札幌がわかりやすく説明します。そのうえで公証役場との手続きを段取りし、必要書類の収集も支援してくれます。
また、死後の後片付けや口座の解約などは死後事務委任が便利です。専門家が手続きを代行すると、親族に負担をかけずに済むため、お金の流れが明確になり、相続トラブルを大幅に減らせるメリットがあります。
よくある質問(Q&A)
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独身の方こそ遺言書を準備することで、財産をどう引き継ぐかをはっきり示せます。突然の病気や事故で亡くなった場合でも、自分の意志を確実に反映できるので安心です。
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一般的には、亡くなった方の親が第一候補です。すでに親が他界しているなら、兄弟姉妹が相続人になります。さらに兄弟姉妹も亡くなっている場合、その子ども(甥や姪)へと範囲が広がります。
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相続人は借金も含めて財産を受け継ぎます。負債が大きいときは、3か月以内に相続放棄や限定承認を検討しなければなりません。早めに専門家へ相談するのがおすすめです。
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戸籍謄本の収集や名義変更手続きは郵送やオンラインでできる部分もありますが、やり方が複雑です。専門家に依頼すると、連絡や必要書類の準備をスムーズに進められます。
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家庭裁判所で手続きを行いますが、書類作成や判断が難しい場合は弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。日本相続知財センター札幌でも状況にあわせたアドバイスを得られます。
この記事の監修者

一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹
2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。