相続税の計算は自分でできる?手順と注意点を総まとめ!

相続税の計算を自分で行いたいと考えている方にとって、何から始めればいいのか、どんな知識が必要なのか、疑問が尽きないのではないでしょうか。相続税は、財産評価や控除の適用など、専門的な知識を要するため「本当に自分でできるのだろうか」と不安になることも多いものです。

本記事では、相続税の計算に必要な準備物や財産の評価方法、さらに計算の具体的な手順について詳しく解説します。自分で計算する場合のメリットとリスクにも触れ、計算をスムーズに進めるためのコツをお伝えします。また、計算ミスや書類の不備を防ぐために、専門家をどのように活用すべきか、具体的なポイントも取り上げます。

相続税を自分で計算する前に知っておきたい基礎知識

相続税とは何か|対象となる財産と非課税財産

相続税とは、亡くなった方(被相続人)が遺した財産に課される税金です。この財産には、現金や預貯金だけでなく、土地、建物、有価証券、さらには骨董品や貴金属なども含まれます。つまり、金銭的価値があるものは、すべて相続税の課税対象になり得ます。しかし、すべてが課税対象となるわけではありません。いくつかの財産には「非課税枠」が設けられています。

例えば、生命保険金には特別な非課税枠があります。これは、「500万円 × 法定相続人の数」という計算式で求められる金額まで非課税です。さらに、墓地や仏壇といった宗教的な財産も非課税対象となります。これらは財産に含めず計算しますので、最初に「課税対象」と「非課税対象」を正確に分けることが重要です。

このように、相続税の計算を始める際には、財産を一つひとつリストアップし、それぞれが課税対象かどうかを確認する作業が不可欠です。手元に財産リストを作成し、税務署のウェブサイトや専門家に確認しながら進めることで、漏れやミスを防ぐことができます。

相続税の計算に必要な書類と準備物

相続税の計算には、いくつかの書類を準備する必要があります。これらの書類を事前に揃えることで、計算や手続きがスムーズに進みます。主な書類は以下の通りです。

  • 戸籍謄本:法定相続人を確定するために必要です。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍が必要になります。
  • 不動産登記事項証明書:土地や建物などの評価額を算出するために使用します。
  • 預貯金残高証明書:被相続人の銀行口座にある預金の金額を確認します。
  • 固定資産税納税通知書:土地や建物の評価に役立つ情報が記載されています。
  • 遺言書または遺産分割協議書:相続財産の分配内容を確認するために必要です。

例えば、土地を評価する場合、固定資産税評価額だけでなく、路線価を基に計算することが一般的です。これらの資料がないと正確な評価ができません。また、預貯金の残高を確認するためには、各金融機関に証明書の発行を依頼しなければならず、数週間かかることもあります。

このように、書類を早めに準備することで手続きをスムーズに進めることができます。事前にリストを作成し、必要書類を一括で揃える努力をするとよいでしょう。

戸籍謄本の取り方については、「【便利】戸籍謄本の取得方法と広域交付制度」、遺言については、遺言書の種類については、「遺言書の種類別に見るメリットとデメリット。最適な遺言書を選ぼう!」で説明していますのでご参照ください。

自分で計算する際のメリットとデメリット

相続税の計算を自分で行う最大のメリットは、コスト削減です。税理士に依頼すると、少なくとも数十万円の報酬がかかることが一般的ですが、自分で行う場合、その費用を節約できます。また、自分自身で財産の評価や分配を詳しく把握できるため、家族内での共有がスムーズになるという利点もあります。

一方で、相続税の計算は専門知識を必要とする複雑な作業です。計算方法を誤ると、申告後に修正を求められる可能性があります。また、控除の適用漏れや財産評価のミスが発生するリスクも考えられます。さらに、申告期限が決まっているため、期限内に正確な計算を終えるプレッシャーを感じることもあります。

例えば、土地の評価額を計算する際、固定資産税評価額ではなく、誤って市場価格を使用すると、相続税額が過大に算出されることがあります。こうしたミスを避けるためにも、最新の資料やツールを活用し、慎重に進める必要があります。

このようなメリットとデメリットを考慮した上で、自分で計算するか、税理士に依頼するかを検討するのがよいでしょう。もし不安がある場合には、無料相談を利用するのも一つの方法です。

相続税の計算方法|手順をわかりやすく解説

財産の評価額を求める方法|土地・建物・現金の計算例

まず、正味の遺産額を把握します。

正味の遺産額は、次の式で算出します。
すべての財産 - 非課税財産 - 債務等 + 一定の贈与財産

①不動産、預貯金、現金、株式など相続の対象となる財産をすべて洗い出します。

被相続人が所有していた財産の評価額を計算するステップです。財産の種類によって評価方法が異なるため、正しい方法を適用することが重要です。主な財産とその評価方法は以下の通りです。

  • 現金・預貯金:額面通りの金額で評価します。例えば、銀行口座に1,000万円あれば、そのまま1,000万円が評価額です。
  • 土地:国税庁が公開している路線価を基に評価します。路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算します。
  • 建物:固定資産税評価額をそのまま使用します。最新の固定資産税納税通知書を確認してください。
  • 有価証券:株式の場合は、評価基準日における終値や取引価格を基に評価します。

②相続税の対象にならないお墓や死亡保険金・死亡退職金の一定部分などの非課税財産を除きます。

③被相続人の借金や、未払金、葬式費用などを差し引きます。

④相続開始前7年以内の贈与財産(2023年12月31日までに受けた贈与については、相続開始前3年以内の贈与財産)および相続時精算課税制度の対象となった贈与財産があれば加算します。

基礎控除額の計算方法~「基礎控除額」の公式と具体例

次のステップは、基礎控除後の相続税の対象となる財産額を求めます。

基礎控除額とは、相続税が課される財産から控除できる金額のことです。

相続税の対象となる財産=正味の遺産額-基礎控除額
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の対象となる財産額がゼロまたはマイナスであれば相続税はかかりません。

例えば、被相続人に配偶者と2人の子どもがいる場合、法定相続人の数は3人です。この場合の基礎控除額は以下のように計算します: 3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円

つまり、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。このように、法定相続人の人数を正確に把握し、それを基に基礎控除額を計算することが大切です。

各人の課税額を計算する流れ~まず相続税額の総額を求める

課税対象額が求められた後、相続税の総額を計算するために、まず法定相続分に応じて各相続人が相続したと仮定し、それぞれの課税額を計算します。この「仮定の相続税額」を合計することで、相続税全体の総額を求めることができます。

計算の手順

  1. 課税対象額を法定相続分で按分
    各相続人が相続する財産額を仮定します。
  2. 各人の仮定の相続税額を計算
    累進税率を適用し、控除額を差し引いて仮定の相続税額を計算します。
  3. 全員分の相続税額を合計
    各相続人の仮定の税額を足し合わせることで、相続税の総額を求めます。

例えば、総財産額が7,000万円で、基礎控除額が4,800万円の場合、課税対象額は次のように計算されます: 7,000万円 – 4,800万円 = 2,200万円

課税対象額:2,200万円
法定相続人:配偶者(1人)と子ども(2人)
法定相続分:配偶者1/2、子ども各1/4

1. 法定相続分に応じた相続額を仮定

  • 配偶者:2,200万円 × 1/2 = 1,100万円
  • 子ども1人当たり:2,200万円 × 1/4 = 550万円

2. 各人の仮定の相続税額を計算
相続税率表を基に、それぞれの税額を計算します。

仮定の相続額税率控除額仮定の相続税額
配偶者 1,100万円15%50万円(1,100万円 × 15%) – 50万円 = 115万円
子ども1人500万円10%0円550万円 × 10% = 55万円

3. 仮定の相続税額を合計

  • 配偶者:115万円
  • 子ども2人:55万円 × 2人 = 110万円
  • 相続税総額:115万円 + 110万円 = 225万円

各相続人ごとの相続税額を計算

①各相続人が実際に相続する財産の割合に応じて相続税額を割り振ります。

②配偶者控除や未成年者控除の適用で最終的な税額を確定する

最後に、配偶者控除や未成年者控除などの特例を適用し、最終的な相続税額を確定します。例えば、配偶者が相続する財産は、法定相続分または1億6,000万円までは非課税となります。また、未成年者が相続する場合、20歳に達するまで1年ごとに10万円が控除されます。

無料ツールやシミュレーターを使った計算方法

相続税の計算には、国税庁や金融機関が提供している無料の計算ツールやシミュレーターを活用すると便利です。これらのツールは、基礎控除額や税率を自動計算してくれるため、初心者でも簡単に使いこなせます。

例えば、「基礎控除額」や「課税対象額」を入力するだけで、各相続人ごとの課税額が自動的に表示されるツールがあります。これを利用することで、複雑な計算を省略し、誤差を最小限に抑えることが可能です。

ただし、これらのツールはあくまで参考値を示すものです。実際の申告書を作成する際には、ツールで計算した内容を再確認し、必要に応じて専門家のチェックを受けることをおすすめします。

自分で計算する際に注意すべきポイント

誤りが起こりやすい計算ミスの例と対策

相続税を自分で計算する際、特に気を付けなければならないのが計算ミスです。計算ミスは追加納税やペナルティの原因となるため、事前に注意すべきポイントを押さえることが重要です。以下は、よくある計算ミスの例です。

  1. 基礎控除額の計算ミス
    法定相続人の人数を間違えることがあります。例えば、養子がいる場合、基礎控除額に反映される人数は制限がありますが、誤って全員分を含めてしまうケースがあります。
  2. 財産評価額の誤差
    土地や建物などの評価方法を間違えることも多いです。路線価を用いるべきところで固定資産税評価額を使用したり、反対に市場価格を使用して過大評価したりする場合があります。
  3. 債務控除や非課税枠の適用漏れ
    被相続人が残した借金や葬儀費用は控除できますが、それを計算に反映しないことが原因で税額が増えてしまうことがあります。また、生命保険金の非課税枠を適用し忘れることもあります。

【対策】
計算ミスを防ぐには、まず必要な情報をリスト化し、順序立てて進めることが大切です。例えば、路線価図や固定資産税納税通知書を事前に確認し、評価額を一つひとつ正確に計算するようにします。また、相続税計算シミュレーターを利用すると、基礎控除額や税率が自動計算されるため、初心者にもおすすめです。

納税期限と遅延によるペナルティ|必ず守るべきスケジュール

相続税の申告と納税には、期限が厳密に定められています。被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に申告を行わないと、延滞税や無申告加算税が発生します。

例えば、相続税の申告が1年遅れた場合、延滞税として年利14.6%が課せられることがあります。また、無申告加算税は、納付すべき税額の15~20%が追加されるため、大きな経済的負担となります。

相続税対策を取り入れるポイント|生前贈与や配偶者控除の活用方法

相続税の負担を軽減するためには、相続税対策を取り入れることが重要です。代表的な方法として、生前贈与や配偶者控除があります。

  1. 生前贈与
    年間110万円までは贈与税が非課税となります。この枠を活用し、事前に財産を分散させることで、相続税の課税対象額を減らすことができます。例えば、5年間で550万円の財産を贈与すれば、それだけ課税対象額が減ります。
  2. 配偶者控除
    配偶者が相続する財産については、法定相続分または1億6,000万円まで非課税となる特例があります。これにより、配偶者の負担を大幅に軽減することが可能です。

【注意点】
ただし、生前贈与には7年以内贈与加算といったルールがあるため、計画的に進めることが重要です。また、特例の適用条件を確認し、必要な手続きを怠らないよう注意してください。

専門家を活用するメリットとその役割

税理士や役割|計算の正確性とトラブル回避

専門家を活用する最大のメリットは、計算ミスを防ぎ、トラブルを未然に防ぐことです。税理士は相続税の申告を専門的にサポートし、特に複雑な財産評価や控除適用を正確に行います。例えば、大きな土地や株式を所有している場合、評価方法を誤ると税額が大幅に変わる可能性があります。このような場合、税理士が最適な評価方法を提案し、余計な税負担を防ぐことが可能です。 自分で計算するのが不安な場合や複雑なケースが想定される場合は、専門家への相談を検討しましょう。

日本相続知財センター札幌の役割|相談できる内容とサポート範囲

日本相続知財センター札幌は、相続に関するさまざまな悩みをトータルでサポートする専門機関です。特に、相続税の計算を自分で行おうとしている初心者に向けた手厚い支援を提供しており、その役割は多岐にわたります。

まず、相続税の計算方法について、グループ内の相続専門税理士が分かりやすく説明し、財産評価や控除の適用を正確に進めるためのアドバイスを行います。例えば、土地の評価額を計算する際、路線価や固定資産税評価額を基にした適切な計算方法を提案してくれます。

相談者に応じた柔軟な対応もこのセンターの特徴です。初回相談は無料で、相続税の計算を相談したいという方には最適な相談先といえます。時間的な余裕がない方や、どの部分で専門家に頼るべきか分からない方にとっても、安心して利用できる支援体制が整っています。

税理士を選ぶ際のポイント|信頼できる相談先の見極め方

相続税の計算を自分で進めるか、それとも税理士に依頼するかを検討する際には、信頼できる相談先を選ぶことが成功へのカギとなります。ここでは、専門家を選ぶ際にチェックすべき3つのポイントを紹介します。

  1. 実績と経験
    相続税の計算に慣れている専門家を選ぶと安心です。特に、土地や株式などの複雑な財産評価を扱った経験が豊富な専門家を探しましょう。例えば、「土地の路線価評価が不明確で困っている」といった相談にも迅速に対応してくれる専門家は信頼できます。
  2. 対応力とサポート体制
    相談に対して親身に対応し、丁寧に説明してくれる専門家を選ぶことが大切です。さらに、相続税の計算だけでなく、相続登記や遺産分割協議書の作成など、付随する手続きにも対応できる専門家であれば、一つの窓口で多くの問題を解決できます。その点では、日本相続知財センター札幌が適任と言えます。
  3. 料金の透明性
    専門家に依頼する際、料金体系が明確であることは重要です。事前に費用の見積もりを確認し、追加料金が発生する可能性についても尋ねておきましょう。不明確な料金設定の専門家は避けるのが無難です。

信頼できる専門家を見つけるには、口コミや紹介を参考にするのも一つの方法です。また、日本相続知財センター札幌のように、相続専門税理士がグループ内にいる機関を利用すると、自分に合った相談先を見つけやすくなります。

よくある質問(Q&A)

  • 計算を途中まで進めたものの、不安が残る場合は、専門家に確認してもらうのがおすすめです。計算ミスや控除漏れがあると、後から修正申告が必要になることもあります。税理士に相談し、計算内容を見直してもらいましょう。

  • 基礎控除額内に収まる場合、原則として相続税の申告は不要です。ただし、財産評価の結果が基礎控除額を超える可能性がある場合や、生命保険金の非課税枠を適用するためには、申告が必要となるケースもあります。迷った場合は税務署に確認するか、税理士に相談してください。

  • 無料ツールは、あくまで参考として活用するものです。特に、財産の種類が多い場合や評価額の算定が難しい場合には、税理士にチェックしてもらうことを検討してください。

  • 相続人が多い場合、分配割合や控除の適用が複雑になることがあります。例えば、法定相続分が均等でない場合や、遺産分割協議が難航する場合、計算の難易度が上がります。こうしたケースでは、早めに税理士に相談して進めるとスムーズです。

  • 税理士に相続税申告を依頼する場合、費用は総財産の0.5%から1%に相当する報酬額が目安です。土地の評価や遺産分割の調整が必要な場合は、さらに費用がかかることもあります。事前見積もりを依頼し、納得のいく価格とサポート内容を確認してから契約するようにしましょう。

この記事の監修者

税理士法人 中野会計事務所  税理士 湯山 啓太

税理士法人 中野会計事務所
税理士 湯山 啓太

大学卒業後、複数の会計事務所において法人税業務に加え、個人および法人の相続・贈与・事業承継などの資産税業務の担当として勤務したのち、2019年10月より税理士法人中野会計事務所に所属。千葉県税理士会 所属、登録番号118096。相続税申告を数多く手掛け、個人から法人まで税務についての幅広いサービスを提供している。

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