家族信託の失敗事例を紹介!後悔しないためにできること

家族信託は相続対策として有効ですが、誤った手続きや理解不足から失敗や後悔を招くことがあります。この記事では、よくある失敗事例やその回避方法について解説します。

家族信託で失敗・後悔する理由とは?

家族信託の基本と仕組み  

家族信託は、親族が将来の財産管理をスムーズに行えるようにするための制度です。信託を行う際、委託者が受託者に財産の管理・運用を任せ、受益者がその利益を享受します。しかし、信託には専門的な知識が必要で、間違った設計をするとトラブルに繋がることがあります。家族信託を理解していないと、後悔する結果になる場合があるので、仕組みをしっかり把握しましょう。

失敗・後悔するケースの共通点  

家族信託で失敗・後悔する共通点としては、主に「計画不足」「専門家の不関与」「受託者の選定ミス」が挙げられます。これらのケースは信託制度の複雑さや、家族内でのコミュニケーション不足が原因となります。計画段階での適切な準備がなければ、家族間のトラブルや財産管理の失敗を招き、後悔する結果になりやすいです。

家族信託でよくある失敗事例とその回避策

認知症による契約不能  

家族信託の契約は、委託者の判断能力があるうちに行う必要があります。特に認知症が進行してしまうと、家族信託の契約自体が無効になってしまうことがあります。そのため、信託契約は早めに検討し、本人が健全な精神状態で決定を下せるタイミングを逃さないことが重要です。

信託対象財産のミス  

家族信託では、どの財産を信託するかが重要ですが、信託できない財産を対象にしてしまうと契約が無効になったり、トラブルの原因となります。例えば、特定の種類の株式や預貯金口座は信託の対象外です。財産の選定時には、専門家に相談することが大切です。

自己流で契約書を作成しトラブルに  

家族信託の契約書は、法的に正確でなければなりません。専門家に頼らずに自己流で契約書を作成すると、契約内容に漏れや誤りがあり、後々のトラブルの原因となることがあります。契約書の作成は、司法書士などの専門家に依頼し、法的に問題のない形で進めるべきです。

家族間の不和を引き起こしたケース  

家族信託を行う際に、家族間での十分な話し合いがないまま決定すると、後から不満が生じて家族間の対立が深まることがあります。例えば、父親と長男とが家族信託契約をしましたが、長女には何も知らされず後から契約の存在を知ることになりました。これにより、長男と長女のトラブルが起きてしまいました。信託の内容が不公平だと感じる親族がいた場合、相続トラブルへと発展しかねません。信託の計画段階で、関係者全員で合意を得ることが大切です。

予想外の税金発生の失敗例  

家族信託の設計次第では、思わぬ税金が発生する場合があります。例えば、不動産を信託し、その受益者を孫に指定した場合、贈与税が発生することがあります。また、不動産の名義変更や信託終了時の登記に伴い、高額な登録免許税が発生するケースもあります。この税金は、契約内容や信託の設計により異なり、場合によっては通常の数倍の税率が適用される可能性があるため、注意が必要です。

受託者=受益者で信託が強制終了した事例  

信託契約で、受託者と受益者が同一人物となった場合、信託が成立しなくなり、契約が無効になってしまうことがあります。特に「1年ルール」によって、受託者=受益者が同じ場合、信託が1年以内に終了するリスクがあります。適切な受託者の選定が必要です。

アパート経営の損益通算ができなくなったケース  

家族信託を利用する際、特に不動産経営を行っている場合には、損益通算に注意が必要です。通常、赤字経営の不動産の損失を他の黒字経営の不動産の利益と相殺することができますが、家族信託を行うと、信託した不動産の損失は損益通算の対象外となる場合があります。これは、信託財産の扱いに関する法律が影響しているためです。これにより、所得税が予想以上に高くなるリスクがあるため、信託の設計時には経営状況と税務面を事前に税理士などと相談し、リスクを回避する対策を取ることが重要です。

遺留分によるトラブルの発生  

家族信託が遺留分(法定相続人に保証される最低限の相続分)を侵害する形で行われた場合、後々、相続人間でトラブルが発生する可能性があります。遺留分を考慮せずに信託を行うと、相続人が不満を持ち、争いに発展することがあります。遺留分に配慮した形での信託設計が必要です。

家族信託を成功させるための注意点

専門家の関与の重要性  

家族信託は法的にも複雑であるため、専門家の助けを借りることが成功の鍵です。税理士、司法書士などの専門家に相談し、適切な契約内容と実行計画を立てることで、失敗や後悔を防ぐことができます。信託の内容や法的手続きに精通した専門家の関与が不可欠です。

事前に家族会議を開く

家族信託を検討する際に家族会議を開くこともよいでしょう。家族信託の内容を知らされていない親族が不公平感や不安を感じ、トラブルになることもあります。そのため、予め家族会議を開催し、全員の合意を得て、進めていくことがベターです。

信託契約の見直しと定期的な相談  

家族信託は一度契約して終わりではなく、家族の状況や法改正に応じて契約内容を見直すことが必要です。また、定期的に専門家と相談し、信託の運用状況や税務面での影響を確認することが大切です。これにより、家族信託が円滑に運用され、トラブルを未然に防ぐことができます。

その他の相続対策も検討する

認知症対策として重宝されている家族信託ですが、当然、家族信託だけでは対応できないケースもあります。そこで、遺言や任意後見契約、生命保険など他の方法を組み合わせることも有効です。

さらに、財産の状況や家族関係からみると、家族信託が適正ではないこともあります。金銭管理をお子さんに任せたい、という場合には、思い切って生前贈与を活用するという方法もあります。専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。

専門家の役割とは?

司法書士の役割  

司法書士は、家族信託に関わる不動産の登記や信託契約書の作成をサポートします。また、家族間での調整や信託内容の法的チェックを行い、法的に問題のない形で信託が成立するよう支援します。

税理士の役割  

税理士は、信託に伴う相続税や贈与税の計算を行い、最適な税務対策を提案します。また、信託財産の運用状況や課税対象となる資産の評価を行い、適切な税負担を考慮したプランを提供します。

日本相続知財センター札幌の役割  

日本相続知財センター札幌では、家族信託に関する包括的なサポートを提供しています。法的手続きや税務対策に加え、遺産分割対策などを専門家とともにサポートし、アドバイスも行っています。地域に根ざした専門家として、信託を成功に導く支援をしています。

よくある質問(Q&A)

  • 家族信託の最大のメリットは、将来の相続トラブルを防ぎ、財産管理をスムーズに行える点です。一方で、専門的な知識が必要であり、手続きが煩雑なことや、税務面での注意が必要です。

  • 家族信託では、信託契約に変更条項が含まれている場合、受託者の変更が可能です。受託者が辞任したり、不適切な行動が見られたりした場合、他の家族や専門家と相談し、受託者を変更することができます。信託契約書に変更の条件や手続きを明記しておくと、スムーズに変更ができ、トラブルを避けることができます。

  • 契約後にトラブルが発生した場合、まずは受託者や専門家に相談することが大切です。契約書に明記されている内容を確認し、トラブルの原因を特定します。場合によっては、契約の見直しや修正が必要となることもあります。また、専門家に相談することで法的対応が可能となり、問題を解決に導けます。

  • 家族信託は、特に認知症などで将来の判断能力が低下する可能性のある高齢者に向いています。また、財産を効率的に管理したい人や、家族間の相続トラブルを未然に防ぎたいと考える人に適した方法です。資産を守りたい場合、信託を検討する価値があります。

  • 家族信託に関する専門家への依頼費用は、ケースバイケースですが、契約書の作成や不動産の登記、税務相談に応じて異なります。一般的には、司法書士などに依頼する場合、数十万円程度が必要です。信託財産の規模や内容によっても費用が変動するため、事前に複数の専門家から見積もりを取ることが推奨されます。

この記事の監修者

一般社団法人 一般社団法人日本相続知財センター札幌 常務理事 成田 幹

一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹

2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。

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