成年後見人の費用と報酬の仕組み~後見の相場をわかりやすく解説
家族や親族の中に判断能力が十分でない方がいる場合、財産管理や日常生活の契約手続きなどが難しくなることがあります。そんなときに役立つ制度として、「成年後見制度」があります。しかし、成年後見人の費用はどのくらいかかるのか、具体的な報酬や支払い方法はどうなっているのか、初めて調べる人にはわかりづらい部分が多いです。この記事では、成年後見制度における後見人や後見監督人の費用、申立手続きの流れや注意点、専門家の役割などを詳しく解説します。読んだあと、「実際にどれほどのお金が必要なのか」「どんなサポートを得られるのか」がわかる内容です。ぜひ最後までお読みください。
目次
成年後見人 費用の基礎知識
成年後見制度とは
成年後見制度とは、判断能力が低下した方を支援するために法律で定められた仕組みです。高齢の方だけでなく、若い方でも病気や障がいなどで判断能力が十分でないときに利用できます。家族や専門家が「後見人」や「保佐人」「補助人」として、財産管理や重要な契約事務などを代わりに行います。
成年後見制度には大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。法定後見は、判断能力が不十分になったあとで、家庭裁判所が後見人を選ぶ仕組みです。一方、任意後見は、将来の判断能力低下に備えて、自分が選んだ人と契約を結んでおく方法です。
費用の基本的な考え方
後見人を選ぶときには、申立手数料や鑑定費用といった初期的な費用のほか、後見人や後見監督人へ支払う報酬が発生します。特に法定後見の場合、費用は最終的に家庭裁判所が決定する流れになります。報酬は後見人の業務量や被後見人(支援を受ける方)が持っている財産の状況などに応じて異なることが特徴です。
さらに、専門家が後見人に選任された場合は、毎月の報酬の目安が高めになる傾向です。これは財産管理や各種手続きが複雑になる可能性を考慮しているためです。また、後見監督人がつく場合には、監督人の報酬も加わります。
どの費用が対象になるか
成年後見制度にかかる費用には、以下のようなものが含まれます。
- 申立手続き関連の費用
・収入印紙や郵便切手代、戸籍謄本・登記事項証明書などの書類取得費
・家庭裁判所に提出する医師の鑑定費用(必要な場合) - 後見人報酬・後見監督人報酬
・月額の報酬を裁判所が決定
・被後見人の財産や業務内容で変動 - 専門家報酬
・弁護士や司法書士が手続きのサポートを行う際の着手金や相談料
・書類作成や家庭裁判所への同行などの費用
多くの場合、これらの費用は被後見人の財産から支払う形です。しかし、被後見人が十分な資金を持っていないケースでは、公的補助制度や家庭での負担方法を検討する必要があります。
法定後見人や後見監督人の報酬や費用
法定後見人の報酬基準
法定後見人の報酬は、基本的に毎月の額が家庭裁判所によって決められます。目安としては、被後見人の財産の大きさや後見人がどれほど複雑な手続きに関与するかにより変動します。たとえば、資産が少なく日常的な管理業務が中心の場合は月1〜2万円台、資産規模が大きかったり不動産の処分など難しい案件を扱うときは月3〜5万円、あるいはそれ以上になることもあります。
ただし、これは裁判所が案件ごとに判断するもので、明確に「○○円」と固定されているわけではありません。被後見人の生活状況や財産管理の負担が増えると、後見人の報酬も高まる傾向があります。
後見監督人の費用負担
後見監督人は、後見人がきちんと業務を行っているか監督し、被後見人の利益を守る役割を担います。後見監督人が選任されると、その報酬も別途発生します。毎月の報酬が1〜2万円程度かかることが多いですが、これも後見人の報酬と同様に家庭裁判所が判断します。
監督人がつくケースとしては、後見人が親族であっても財産の規模が大きい場合や、相続争いが起きやすいような状況が想定される場合などがあります。特に財産管理が厳重に必要だと判断された場合、後見監督人の選任が必須になることがあります。
報酬額の相場と支払い方法
報酬額の相場は、被後見人の資産状況によって左右されます。財産が少ないのに報酬が高額になりすぎると、被後見人の生活に影響が出る恐れがあります。そのため、家庭裁判所は後見人や監督人の職務を考慮しつつ、被後見人の生活費や医療費なども踏まえて総合的に判断します。
支払い方法は、毎月の報酬を被後見人の口座から引き落とす形をとることが多いです。後見人が自分で管理している場合でも、実際には家庭裁判所が定めた金額内で処理し、年度ごとや定期的に報告書を提出します。このように、後見人の報酬は極力「不透明さ」をなくすために審査が入ります。
不足した場合の支援制度
収入や資産等の状況から、後見・保佐・補助開始の申立費用(鑑定費用)や、成年後見人等に対する報酬を負担することが困難な方に対して、市町村が助成を行っています。詳しくは市町村にお問い合わせください。
選任から申立手続きまでの流れと注意点
申立に必要な書類
法定後見を始める際は、家庭裁判所に申立書を提出します。そのときに必要な書類としては、戸籍謄本、住民票、後見人候補者の身分証明書、財産目録、通帳の写しや不動産の登記事項証明書などが挙げられます。本人の診断書や必要に応じて医師の鑑定書が求められることもあります。
書類をそろえるには一定の時間と費用がかかります。多くの場合、短くても数週間、長い場合には数か月かかりますので、早めに準備を進めておくことが大切です。
申し立て時の手数料や実費
法定後見の申し立てを行うときは、収入印紙代や切手代が必要になります。さらに、医師の鑑定が必要なケースでは鑑定費用がかかることがあります。鑑定費用は約5〜10万円ほどかかることが一般的です。
不動産が複数あったり、財産の全体像を確認するのに手間がかかる場合は、必要書類が増えて実費も上がります。特に財産目録の作成で専門家に依頼すると、その分の報酬が発生する可能性がある点に注意が必要です。
審判後の流れと監督
家庭裁判所が後見を開始する審判を下したら、選任された後見人が財産管理や生活支援に着手します。後見人は、被後見人の財産を把握し、必要に応じて不動産を処分したり、年金の手続きを行うなど多岐にわたる事務を担います。
後見監督人が選任されたケースでは、後見人が正しく業務を行っているかどうかを定期的に確認します。後見人は、年に1回や数か月に一度のペースで監督人や家庭裁判所に財産目録や使用明細などを報告します。
トラブルを防ぐポイント
後見人と親族の間で、後見人の報酬が高すぎるのではないかというトラブルが起こることもあります。こうした問題を防ぐためには、最初に「報酬は家庭裁判所が決める」という理解を共有し、被後見人の財産状況を可能な限り透明にする姿勢が大事です。
専門家の役割 ~ 日本相続知財センター札幌の支援体制
弁護士や司法書士の関わり方
法定後見を進めるうえで、弁護士や司法書士などの専門家が手続きに深くかかわる場合があります。たとえば、申立書の作成や審判後の財産管理など、専門的な知識が必要な領域も多いです。専門家なら、戸籍謄本の取得や財産目録の整備、家庭裁判所への書類提出などをスムーズに進められます。
また、相続の発生が見込まれるとき、共有名義の不動産や複雑な相続争いのリスクが考えられるときは、初期段階から専門家に相談するのが望ましいです。後見人が弁護士の場合、法律問題に対処しやすい利点もあります。
成年後見の継続的サポート
後見人の仕事は、選任されたら終わりではありません。日々の支払い手続きや、被後見人の生活の状況変化に合わせたサポートが欠かせません。また、被後見人の介護サービスや医療体制が変われば、契約内容を見直す必要が出てきます。
専門家が後見人になったり、支援メンバーとしてかかわる場合、これらの変化にも柔軟に対応しやすいです。
日本相続知財センター札幌への依頼メリット
相続や財産管理の分野では、日本相続知財センター札幌のような専門機関に相談する方法があります。こちらでは、相続と後見に強い実務家が連携しており、以下のようなメリットが期待されます。
- ワンストップでの相談
法律、税務、不動産の専門家がチームとして動くため、多角的なアドバイスを受けやすいです。財産全体の現状把握から相続対策までを一括して相談しやすい環境があります。 - 地域に密着した対応
札幌や北海道内の事例に精通しているため、地方特有の土地問題や相続事例にも対応しやすいです。遠方から北海道へ帰省できない方の相談などにも応じてくれることがあります。 - 複雑なケースへのサポート
たとえば、親族が多い場合や、事業を営んでいる方の後見管理など、標準的なケース以上に専門知識が求められる場合に心強い存在です。必要に応じて弁護士、司法書士などが問題解決に取り組んでくれます。
成年後見は長期にわたる制度なので、信頼できる専門家や機関に継続支援を依頼しておくと安心感が高まります。
よくある質問(Q&A)
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成年後見のうち、家庭裁判所が後見人を選ぶのが法定後見で、あらかじめ契約によって後見人候補を決めておくのが任意後見です。費用面では、任意後見の場合、契約書作成に公証役場の手数料が発生する一方、将来の報酬について本人と事前に取り決めをすることが可能なメリットがあります。ただし、実際に後見が開始されたあとは、財産の規模に応じて報酬の設定が行われる点は法定後見と似ています。
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親族が後見人になると報酬が低めに設定される場合が多いですが、必ずしも0円というわけではありません。一方、専門家(弁護士・司法書士)が就任すると、手続きの複雑さや責任の重さもあり、報酬がやや高額になりやすいです。しかし、専門家なら法律面でのリスク回避がしやすく、長期的に見ると結果的に費用以上のメリットを得られる可能性があります。
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後見人や監督人の報酬が家計の負担になり、支払いが難しいと感じるケースもあります。そういった場合には、市区町村の相談窓口を利用する方法があります。所得や資産に応じて制限はありますが、立て替えや分割払いの選択ができる場合もあります。
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後見監督人の費用は、原則として被後見人の財産からまかなわれます。後見監督人はあくまで被後見人の利益を守るための制度であるため、被後見人の負担となるのが基本的な考え方です。ただし、財産が少ないときには家庭裁判所が費用負担について別の手段を検討することもあります。
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後見人の不正行為や業務が不適切だと疑われるような場合、家庭裁判所に「解任申立」を行う方法があります。正当な理由が認められれば、後見人が別の人に交代することも可能です。しかし、単に「費用が高い」「対応が合わない」といった理由だけでは、裁判所が認めないケースが多い点に注意しましょう。後見人との連絡不足が原因なら、まずはコミュニケーションを強化して解決を図ることが大切です。
この記事の監修者

一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹
2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。