「非上場株式の相続」トラブル防止!手続き・税務対策まとめ
非上場株式が相続財産に含まれる場合、手続きや税務の問題が非常に複雑です。特に中小企業の経営者やその家族が株式を相続するケースでは、「株価の評価方法」「相続税の負担」「手続きの流れ」について正確に理解する必要があります。この記事では、非上場株式の相続について、初心者でも理解できるように解説します。さらに専門家の役割やよくある質問も取り上げていますので、相続対策を進める際の参考にしてください。
目次
非上場株式の相続とは?基本知識を解説
非上場株式と上場株式の違いとは?
非上場株式とは、証券取引所に上場されていない企業の株式のことです。多くの場合、中小企業や家族経営の企業が該当します。この株式は、一般の市場で自由に売買することができないため、評価額がわかりにくいという特徴があります。
一方、上場株式は証券取引所を通じて売買が行われ、株価が市場によって決まります。例えば、Aさんが家族経営の製造会社を経営し、その株式を相続する場合、これが非上場株式となります。市場価格が存在しないため、相続時には専門的な評価が必要になります。
非上場株式が相続対象になるケース
非上場株式が相続対象になる典型的なケースには、次のようなものがあります。
1つ目は、企業の経営者が亡くなった場合です。例えば、父が経営していた中小企業の株式を子どもが引き継ぐケースです。会社経営者にとってはよくある状況ですが、手続きを誤るとトラブルや税金の負担が大きくなることもあります。
2つ目は、家族や親族が株主である場合です。例えば、母や兄弟が非上場企業の株式を所有していた場合、その株式も遺産分割の対象になります。こうしたケースでは、相続人間で分割方法について意見が分かれることが多く、事前の対策が重要になります。
相続税の基礎知識と非上場株式
非上場株式も現金や土地と同様に相続税の課税対象です。相続税は、被相続人(亡くなった人)の財産を受け継ぐ際に課される税金です。
相続税の計算には「基礎控除」があり、その金額は 3,000万円+600万円×法定相続人の数 です。例えば、相続人が3人であれば基礎控除額は 4,800万円 となります。この金額を超えた部分に対して税金が発生します。
非上場株式の評価額は市場での取引価格がないため、専門的な算定方法を用いて正確に評価する必要があります。この評価額次第で相続税の負担額が大きく変わるため、慎重に進めることが大切です。
非上場株式の相続手続きの流れ
手続きの全体像と必要な準備物
非上場株式の相続手続きは、以下の手順で進めていきます。
1つ目のステップは、相続人の確定です。戸籍謄本や遺言書を確認し、誰が相続人になるのかを明確にします。
2つ目は、株価を評価するための資料を準備します。具体的には、会社の定款、直近3期分の決算書、株主名簿などが必要です。これらの資料は、税理士や専門家に依頼する際にも重要な書類です。
3つ目のステップは、遺産分割協議です。相続人同士で話し合い、株式の分け方や承継方法について合意します。この段階でトラブルが起きやすいため、あらかじめ遺言書を作成しておくことが効果的です。また、遺言書が存在するかどうかもこのステップで予め確認しておく必要があります。遺言書がある場合には、遺言の記載通りに遺言執行者により株式の名義変更がなされます。
最後に、相続税の申告と納付を行います。相続税の申告期限は「相続開始から10か月以内」です。期限を過ぎると延滞税がかかるため、早めの対応が必要です。
遺産分割協議の基本を学びたいという方には「【遺産分割協議とは】相続トラブルを避けるために知っておくべきこと」記事がおすすめです。また、遺言書については「遺言書の種類別に見るメリットとデメリット。最適な遺言書を選ぼう!」記事で、相続に関する知識が浅い方にも理解しやすいようにわかりやすく解説していますのでご参照ください。
株価の評価方法|3つの算定方式とは?
非上場株式の株価評価には、以下の3つの算定方法があります。
1つ目は 類似業種比準方式 です。これは、同じ業種の上場企業の株価を参考にし、会社の利益や資産に基づいて株価を評価する方法です。
2つ目は 純資産価額方式 です。この方法は、会社の資産から負債を差し引いた「純資産額」に基づいて株価を計算します。会社が多くの資産を持っている場合、この方法では評価額が高くなる傾向があります。
3つ目は 配当還元方式 です。この方法は株式の配当額を基に評価するため、少数株主向けの評価方法として使われます。
非上場株式の評価方法は、会社の状況や株主の立場によって使い分けられます。
非上場株式の相続で注意すべきポイント
相続税の負担と相続税対策のポイント
非上場株式の相続では、評価額が高くなるケースが多く、相続税の負担が大きくなることがあります。特に会社の業績が良い場合や資産が多い場合、純資産価額方式で高額な評価がされることがあるため注意が必要です。
例えば、業績が好調な家族経営の企業の株式を相続する場合、評価額が高くなり相続税も比例して増えることがあります。このような場合、以下の節税対策を考えておくと良いでしょう。
相続税対策の方法
- 生前贈与:生前に少しずつ株式を後継者に譲ることで、1回あたりの贈与税の負担を抑えつつ相続財産を減らすことができます。
- 事業承継税制の活用:一定の要件を満たせば、相続税の納税を猶予する制度が利用できます。事業承継税制を活用することで、経営の継続をスムーズに進められます。
非上場株式は税務の取り扱いが複雑なため、相続税対策は税理士などの専門家に相談しながら進めることが重要です。
株主間のトラブルを防ぐ方法
非上場株式は、自由に売買ができないことや評価額が不透明なことから、相続時に株主間でトラブルが発生しやすい財産です。例えば、遺産分割協議で相続人同士の意見が食い違い、経営権の争いに発展することがあります。
このようなトラブルを防ぐためには、事前に遺言書を作成し、株式を誰に相続させるかを明確にしておくことで、トラブルを防ぐことができます。
会社経営においても、株式の引き継ぎをスムーズに行うために、事前の対策が重要です。
遺産分割で知っておくべき注意事項
遺産分割協議では、非上場株式が「分割しにくい財産」である点に注意が必要です。例えば、不動産のように物理的に分割することができないため、相続人の間で平等に分けるのが難しいことがあります。
この場合、次の方法が考えられます。
- 換価分割:非上場株式を会社や他の株主に買い取ってもらい、その代金を相続人で分ける方法です。
- 代償分割:株式を特定の相続人が取得し、その代わりに他の相続人に現金を支払う方法です。
株式の分割に関しては、相続人間での話し合いがスムーズに進まないことも多いため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが大切です。
非上場株式の相続における専門家の役割
税理士の役割
非上場株式の相続において、税理士は最も重要な専門家の1人です。税理士の主な役割は以下の通りです。
- 株価の評価:適切な評価方法を用いて、非上場株式の株価を算定します。評価額が正しくない場合、相続税が過大になるリスクがあります。
- 相続税の申告と相続税対策:相続税の申告を確実に行い、相続税対策についてもアドバイスを行います。
税理士に依頼することで、複雑な税務手続きがスムーズに進み、相続人の負担を軽減できます。
日本相続知財センター札幌の役割
日本相続知財センター札幌は、相続手続きや事業承継に関する専門的なサポートを提供する機関です。具体的には、以下のような役割を担っています。
- 相続全般のコンサルティング:非上場株式の評価や遺産分割の方法について、総合的なアドバイスを行います。
- 事業承継支援:経営者が後継者に円滑に事業を引き継ぐための支援を行います。
- 専門家ネットワークの紹介:税理士や司法書士、弁護士と連携し、相続に関する様々な問題に対応します。
日本相続知財センター札幌では、初回無料相談のため、安心して相談をすることが可能です。
よくある質問(Q&A)
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非上場株式の評価は、上場株式のように市場での取引価格がないため、専門的な評価方法を用いる必要があります。その評価方法としては、「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」の3つが一般的です。
・類似業種比準方式は、同じ業種の上場企業の株価を基準として、自社の利益や資産状況を反映して算定する方法です。この方式は、会社の収益性や業績が重視されるため、利益の大きい会社ほど評価額が高くなる傾向があります。
・純資産価額方式は、会社の総資産から負債を差し引いた純資産を基準に評価します。この方法は、特に不動産や設備を多く保有する企業で評価額が高くなることが特徴です。
・配当還元方式は、株式から得られる配当金を基に評価する方法で、少数株主が保有する株式の評価に適しています。これは、会社の収益よりも株主に対する配当の安定性が重視されます。
これらの方法は、会社の規模や事業内容、相続人の立場などに応じて使い分けられ、場合によっては複数の方法を組み合わせて算出します。適正な評価を行うためには、税理士や専門家の協力が必要です。
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非上場株式の相続手続きを進めるためには、いくつかの書類が必要になります。これらの書類は、相続人の確定や株式評価、相続税の申告など、さまざまな場面で使用されます。
主に以下の書類が必要です。
戸籍謄本:相続人を確定するために必要です。被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍と、全ての相続人の戸籍謄本が必要です。
株式に関する資料:会社の定款や株主名簿、過去3期分の決算書などが挙げられます。これらは株価を評価する際に重要な資料です。
遺言書(ある場合):被相続人が遺言書を残している場合、その内容を確認し、遺産分割に反映します。
さらに、相続税の申告時には、印鑑証明書や相続関係説明図などの書類が必要です。これらの準備が滞ると手続き全体が遅れるため、早めに収集を開始することをお勧めします。
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相続人が複数いる場合、非上場株式を分けることは簡単ではありません。株式は物理的に分割できないため、遺産分割協議での合意が重要になります。
一般的な方法として、次の2つがよく採用されます。
・換価分割:非上場株式を他の株主や会社に買い取ってもらい、その代金を相続人で分ける方法です。この方法は、株式を現金化することで分配がしやすくなります。ただし、買い取り先を見つける必要があり、時間がかかることがあります。
・代償分割:株式を特定の相続人が取得し、その代わりに他の相続人に現金や他の財産を渡す方法です。この方法は、会社の経営を特定の相続人が引き継ぐ場合によく利用されます。
いずれの方法を選ぶにしても、相続人間での話し合いが不可欠です。協議が難航する場合は、弁護士や税理士に仲介を依頼することも検討しましょう。
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相続税の申告期限は、相続開始から10か月以内です。この期限を過ぎると、ペナルティとして以下の税金が発生します。
・延滞税:申告期限後に納付が遅れた期間に応じて課される税金です。延滞の期間が長いほど税率が上がります。
・無申告加算税:申告自体が遅れた場合に課される税金で、通常は本来の税額の10~15%が加算されます。
期限を過ぎた場合でも、すぐに税務署や税理士に相談すれば、軽減措置を受けられる可能性があります。特に「やむを得ない事情」があった場合は、延滞税や加算税が減額されることもありますので、早めの対応が重要です。
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非上場株式を現金化する方法はいくつかあります。市場での取引ができないため、一般的には以下の方法が検討されます。
・会社による買い取り:会社自体が相続人から株式を買い取る方法です。これにより株式が他の株主に分散せず、会社の運営も安定します。
・他の株主への譲渡:既存の株主に買い取りをお願いする方法です。この場合、事前に会社の定款で譲渡制限の有無を確認しておく必要があります。
・第三者への譲渡:稀なケースですが、外部の第三者に株式を売却することも可能です。ただし、会社や他の株主の承諾が必要になる場合が多いです。
非上場株式の現金化は手続きが複雑であるため、事前に日本相続知財センター札幌や税理士に相談して進めるのが良いでしょう。
この記事の監修者
一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹
2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。