相続人に障害者がいる場合の相続の手続き~知っておきたい手続と相続税減免
本記事では、相続人に障害者がいる場合の相続手続きと相続税申告について詳しく解説します。障害者控除の基礎知識から遺産分割協議、専門家の役割まで、初心者にもわかりやすく説明します。
目次
相続人に障害者がいる場合の対応について
遺産分割と相続税申告
相続手続きにおいて、相続人に障害者がいる場合は特別な対応が必要です。遺産分割協議や相続税申告の基礎知識を確認しましょう。まず、相続税には障害者控除という制度があります。これを利用することで税負担を軽減できます。適用には特定の条件があり、例えば障害の程度や年齢が考慮されます。
相続人に障害者がいる場合の遺産分割協議
遺産分割協議の基本
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割方法を話し合い決定するプロセスです。相続人に障害者がいる場合、その人の生活を考慮した遺産分割が重要です。障害者が意思能力を有している場合、特別な手続きは必要ありません。しかし、障害者に意思能力がない場合には、成年後見制度を利用することになります。
例えば、医師の診断で知的障害者とされ、意思能力がないと判断された相続人がいる場合、その人を支援するために成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見制度の利用
成年後見制度とは、判断能力が不十分な人を支援する制度です。相続人に意思能力がない障害者がいる場合、この制度を利用することで適切な遺産分割が行えます。家庭裁判所に申し立てを行い、後見人を選任してもらいます。これにより、障害者の権利や利益を守ることができます。
相続人に障害者がいる場合の相続税申告
障害者控除を活用した相続税申告
障害者控除は、相続税を軽減するための重要な制度です。相続人に障害者がいる場合、この控除を活用することで税負担を減らせます。障害者控除の具体的な計算方法や申告手続きについて説明します。この場合、障害者である相続人の年齢が85才未満の場合に、相続税から税金が控除できます。
◼︎適用の要件
障害者控除の適用には、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 国内に住んでいること
- 障害者であること
- 法定相続人であること
障害者控除の適用には、障害者の年齢や障害の程度が影響します。具体的な計算例を以下に示します。
障害者の年齢 | 控除額 |
---|---|
20歳 | 10万円 × (85歳 – 20歳)= 650万円 |
50歳 | 10万円 × (85歳 – 50歳)= 350万円 |
このように、障害者の年齢によって控除額が変わります。例えば、20歳の障害者の場合、控除額は650万円となり、50歳の障害者の場合は350万円です。
特別障害者控除の適用方法
特別障害者控除は、さらに高額な控除を受けることができる制度です。特定の条件を満たす障害者に対して適用されます。重度の障害を持つ相続人の場合、この控除を利用することで大幅な税軽減が期待できます。以下に具体的な計算例を示します。
障害者の年齢 | 控除額 |
---|---|
20歳 | 20万円 × (85歳 – 20歳) = 1300万円 |
50歳 | 20万円 × (85歳 – 50歳) = 700万円 |
このように、特別障害者控除は通常の障害者控除に比べて控除額が大幅に増加します。例えば、20歳の特別障害者の場合、控除額は1300万円となり、50歳の特別障害者の場合は700万円です。
障害者の種類の判別について
代表的なものを記載します。
①身体障害者の場合
- 身体障害者手帳の等級が3~6級 ⇒ 一般障害者
- 身体障害者手帳の等級が1級・2級 ⇒ 特別障害者
②精神障害者の場合
- 精神障害者福祉保健手帳の等級が2級・3級 ⇒ 一般障害者
- 精神障害者福祉保健手帳の等級が1級 ⇒ 特別障害者
専門家の役割
税理士の役割
税理士は相続税の申告に関する専門的な知識を持っています。障害者控除や特別障害者控除の適用を受けるための具体的なアドバイスを提供し、適切な申告をサポートします。申告に必要な書類の準備や提出を代行することで、手続きの負担を軽減します。日本相続知財センター札幌のグループの相続専門税理士が担当いたします。
日本相続知財センター札幌の役割
日本相続知財センター札幌は、相続手続き全般に関するサポートを提供します。障害者がいる場合の特別な対応についても手続きについてのアドバイスを行い、相続専門税理士と協力して、遺産分割や相続税申告の手続きを円滑に進めるための支援を行います。
障害者が家族にいる場合の、遺言や任意後見契約などの生前対策や、実際に相続が開始した場合に障害者が相続人の場合の対応方法についてのサポートなどを行います。初回相談は無料ですので、お気軽にお問合せください。また、相続専門税理士と協力をして、遺産分割や相続税申告の手続の支援を行っております。
よくある質問(Q&A)
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相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行い全員の合意を得る必要があります。障害者がいる場合、その人の生活を考慮した分割方法を話し合うことが重要です。
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障害者控除を申請する際には、障害の程度を証明する書類が必要です。控除額の計算方法についても正確に理解し、申告書に正しく反映させることが重要です。例えば、障害者手帳などを用意し、申告書に添付する必要があります。また、計算ミスを防ぐために税理士など専門家の助言を受けることをおすすめします。
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相続税の申告期限は、相続開始の翌日から10ヶ月以内です。この期間内に申告と納税を完了する必要があります。例えば、2024年1月1日に相続が発生した場合、申告期限は2024年11月1日となります。この期限を過ぎると、延滞税やペナルティが発生する可能性があります。
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障害者が相続人である場合、協議への参加には以下のケースに応じた対応が必要です。
(1) 判断能力が十分にある場合
障害があっても意思能力がある場合は、本人が直接協議に参加できます。必要に応じて、弁護士や司法書士などの専門家を同席させることで、適切な意思表示や法的手続きをサポートします。(2) 判断能力が不十分な場合
障害者本人が意思決定できない場合、家庭裁判所で成年後見人を選任し、後見人が協議に参加します。 -
親族に障害者がいる場合、以下の理由から生前対策が特に重要です。
・障害者が生活費や医療費などで経済的な支援を必要とする可能性がある。
・障害者本人の判断能力や権利を守るために適切な手続きを行う必要がある。
・他の相続人との間でトラブルを防ぎ、公平な遺産分割を実現する。上記の点で、まず優先されるのが公正証書遺言です。例えば、遺言書で障害者が受け取る遺産の内容を具体的に指定します。例えば、「障害者の生活費として信託財産に充てる」などの記載が可能です。また、他の相続人が遺留分を主張できるため、全体の遺産配分を考慮してバランスをとります。そして、遺言執行者の指定をすることも重要です。日本相続知財センター札幌の成田などの専門家を遺言執行者として指定することで、遺言内容が確実に実行されます。
この記事の監修者
一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹
2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。