はじめての家族信託〜メリットや注意点を詳しく解説!

家族信託は、家族の財産を守り、相続トラブルを避けるための重要な手段です。本記事では、家族信託の基本概念から、メリット・デメリット、実際にどのような場合に検討すべきか、手続きの流れなどについて詳しく解説します。初めて家族信託を考える方にも理解しやすい内容となっておりますので、ぜひご参考ください。

 家族信託とは何か

家族信託の基本概念

家族信託は、財産の管理や運用を家族間で行う制度です。これにより、財産の引き継ぎや活用を柔軟に行えます。

家族信託の仕組みは、財産を信託する人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)にその財産を託し、特定の人(受益者)の利益のために管理・運用してもらうものです。この制度を利用することで、高齢者や障がい者の生活を安定させるなど、様々なメリットがあります。

委託者、受託者、受益者の役割

家族信託には3つの主要な役割があります。

委託者:信託財産を託す人。財産の所有者であり、信託契約を結びます。

受託者:信託財産を管理・運用する人。信託契約に基づいて財産を適切に管理します。

受益者:信託財産から利益を得る人。例えば、高齢の親が委託者で、子供が受託者、受益者が親自身という形式が一般的です。

家族信託の対象となる財産

家族信託の対象となる財産とは?

家族信託では、さまざまな種類の財産を対象にすることができます。具体的には、不動産、現金、株式、投資信託など、多岐にわたります。これにより、財産を効率的に管理し、適切に運用することができます。

■不動産
不動産は、家族信託の利用が多い財産といえます。例えば、住宅や土地を信託することで、将来のトラブルを防ぎながら、家族のために財産を維持・管理することができます。

■金融資産
現金や預金、有価証券、投資信託などの金融資産も家族信託の対象となります。これにより、財産の分散管理が可能となり、リスクを分散することができます。ただし、上場株式については、証券会社が、比較的新しい制度である家族信託にまだ対応しきれていないこともあり、運用上は信託財産に含めることが困難なことがあります。

■動産
家族信託では、美術品や貴金属などの動産も対象にすることができます。これにより、これらの価値ある資産を適切に管理し、次世代に引き継ぐことができます。

家族信託のメリットとデメリット

家族信託のメリット

家族信託には多くのメリットがあります。

■認知症対策
認知症になった場合でも、受託者が信託契約に基づいて財産を管理できるため、財産の事実上の凍結を防ぐことができます。これにより、委託者の意思を尊重しながら適切な財産管理が行えます。

■財産管理の柔軟性
成年後見制度、特に法定後見制度では、本人の財産を減らさないことが重要視されるため、それに反するような財産の管理をすることはできません。一方で、家族信託は、受託者に大きな裁量を与え、財産の運用をさせることも可能です。

■遺言と同様の効果がある
これは、家族信託契約の中に、次に財産権(受益権)を継がせる人をあらかじめ定めておくことによって、その内容が法律上有効となり、遺言を残すことと同様の効果を得ることができます。

家族信託のデメリット

家族信託にはデメリットもあります。

■手続きの複雑さ
家族信託を設定するには、専門的な知識と手続きが必要です。また、契約内容を高齢の父母に理解してもらうのは中々困難な場合もあります。そこで、信託契約書の作成や登記など、法律の専門家のサポートを受けることが推奨されます。

■トラブルの可能性
例えば、委託者(親)と受託者(子)の間の信頼関係が崩れた場合、トラブルが発生することがあります。信託契約書を明確にし、受託者の役割や義務をはっきりさせておくことが重要です。

■遺留分侵害請求の可能性
例えば、委託者が死亡した場合、家族信託契約によって決めた後継者に財産権(受益権)を承継する際に、遺留分を持つ相続人がいる場合、遺留分相当額のお金を請求してくる可能性があります。そのため、遺留分に配慮しながら信託を設計することや、あらかじめ家族会議をしておく事前対策が必要となるでしょう。

家族信託を検討すべき具体的な状況

認知症対策としての家族信託

例えば高齢の方で認知症のリスクがある場合、家族信託は非常に有効です。将来の判断能力低下に備えて、信頼できる家族に財産の管理を任せることが可能です。また高齢の親御さんの自宅不動産などをお子さんに信託した場合は、受託者のお子さんが売却し、その売却代金を親御さんの施設入居金やその後の生活費などに使うことも出来ます。

障がい者の方のための家族信託

障がい者の方がいる家庭では、家族信託を活用することで、その方の生活を支えるための財産管理がスムーズに行えます。特に、長期間にわたる支援が必要な場合に定期的に資金管理したりするのに有効といえます。

家族信託の手続の流れ

相談・計画

まずは、信託の目的や内容について家族や専門家と相談し、信託の基本的な計画を立てます。この段階では、以下の点を明確にします。

  • 信託の目的(例えば、財産管理、相続対策など)
  • 信託財産(信託に含める財産の特定)
  • 受託者(信託財産を管理する人)
  • 受益者(信託財産から利益を受ける人)

信託契約書の作成

信託の計画が固まったら、司法書士等の専門家の助けを借りて信託契約書を作成します。信託契約書には、信託の目的、信託財産、受託者、受益者、信託期間などの詳細が記載されます。

信託財産の移転

信託契約書が作成後、信託財産を受託者に移転します。例えば、不動産を信託する場合は、不動産の所有権移転登記を行います。これは司法書士が代行することが一般的です。

信託財産が金融資産の場合、信託財産管理用の銀行口座を開設する必要があります。受託者には、自分の財産と信託財産を分別して管理する義務があるからです。ただし、家族信託契約後のトラブルが発生していることもあり、金融機関では家族信託用の口座開設に消極的なところが多いといえます。信託銀行や銀行、信用金庫の中には、家族信託専用の口座を開設できるところを見つける必要があるでしょう。

信託の運用開始

信託財産が受託者に移転された後、信託の運用が開始されます。受託者は、信託契約に基づいて信託財産を管理・運用し、受益者に利益を分配します。

信託の監督・管理

信託の運用が始まった後も、定期的に信託の運用状況を監督・管理する必要があります。受託者は、信託の運用状況を記録し、必要に応じて報告します。なお、信託監督人の設置も契約に盛り込むことが可能です。

信託の終了

信託期間が終了するか、信託契約に定められた条件が満たされた場合、信託は終了します。信託財産は、信託契約に基づいて受益者に分配されます。

専門家の役割

専門家の役割

家族信託の対象財産として不動産が含まれることが多く、信託登記の必要があるために、司法書士の助けが欠かせません。司法書士は、信託契約書の作成から不動産信託登記などの手続きのサポートを行います。日本相続知財センター札幌は、司法書士と共に、信託の目的や財産の詳細、受託者の選定、契約書の作成についてのサポートを行います。

よくある質問(Q&A)

  • 家族信託の手続きには、様々なステップが含まれており、通常は数ヶ月かかることが多いです。まず、信託契約書を作成するには、家族の希望や状況に応じて内容を練り上げるために時間がかかります。その後、信託財産の登記が必要です。特に不動産が含まれる場合、登記手続きが複雑で時間がかかることがあります。したがって、家族信託を開始する前に、手続き全体のスケジュールを確認し、余裕を持って準備することが重要です。

  • 家族信託にかかる費用は、契約書の作成費用や専門家の報酬などが含まれ、最低数十万円はかかることが多いです。なお、目的不動産の価格および件数などによっては手続き費用が高額になる場合もあります。事前に見積書などを提示してもらい確認が必要といえます。

  • 家族信託と遺言書には、目的や機能において明確な違いがあります。

    家族信託は生前に財産を管理・運用するための仕組みです。生前に財産管理を委託者の意思に基づいて行うため、認知症などで意思決定が難しくなった場合でも安心して財産を管理できます。

    一方、遺言書は委託者の死後に財産をどのように分配するかを指定するための文書で、相続争いを防ぐための手段として利用されます。それゆえ、相続が発生した後に効力を発揮します。

    したがって、家族信託と遺言書は、それぞれ異なる目的と状況に応じて活用されているといえます。

この記事の監修者

一般社団法人 一般社団法人日本相続知財センター札幌 常務理事 成田 幹

一般社団法人 日本相続知財センター札幌
常務理事 成田 幹

2012年行政書士登録。2014年日本相続知財センター札幌 常務理事に就任。遺言・任意後見・家族信託などのカウンセリングと提案には実績と定評がある。また、法人経営者の相続・事業承継支援の経験も豊富で、家族関係に配慮した提案が好評。

無料相談はこちら

初回相談は無料です。どうぞお気軽にご連絡ください。

お電話の方はこちら

0120-750-279

受付時間 平日9:30〜18:00(土日祝日休業)